前回は、個人資産の「現金・預貯金」による保有は安全なのかを取り上げました。今回は、堅実な資産運用に「株式投資」が向いていない理由について見ていきます。

インフレには強い「株式投資」だが・・・

株式投資は、古くから資産運用の手段として利用され、現在も最も身近な投資といえるでしょう。大きなメリットは、インフレに強いということです。なぜなら、企業の業績は物価と連動しているからです。物価が徐々に下がっているデフレのときには、モノの値段がどんどん下がり、安売り競争になりますので、企業はどんどん苦しくなっていきます。

 

逆に物価が上昇すると、企業は商品の値段を上げることができます。それによって、収益がよくなり、業績が向上します。株価はその企業の業績に連動していますので、企業が儲かれば、株価も上がります。

 

ですから、モノの値段が上がるインフレ時には株価も上昇するのです。それは過去のデータからも明らかです。株式に投資をしていれば、インフレとともに株価が上昇し、資産価値が上がるので、結果的にインフレに対抗できることになります。

 

問題は、すべての企業の株価が上がるわけではない、ということです。2012年に第二次安倍政権が誕生してアベノミクスを打ち出すと、日本の株式は大きく上昇しました。

 

それ以前の日経平均株価は9000円前後でしたが、その後、約1年間で1万6000円まで上昇したのです。当時はどんな銘柄を買っても儲かった、といっても過言ではありません。

 

しかし、いつまでもそのような状況が続くわけはありません。今後は、上がる銘柄と上がらない銘柄に二極化するでしょう。上がる銘柄とは、前述のように業績のよい企業の株式です。そのような企業を簡単に見つけることができるでしょうか。

予期せぬ出来事で価格変動する「プロでも難しい」世界

また、株式市場は、その企業の業績だけではなく、日本の、あるいは世界の経済情勢や政治によっても大きく影響を受けます。それによって激しく価格変動をすることもあり、とくに日本の株式市場は米国の株式市場の影響を受けやすい傾向にあります。米国の株価が上昇すれば、日本の株価も上昇し、米国の株価が下落すれば、日本の株価も下落するのです。

 

「米国がくしゃみをすれば、日本が風邪を引く」とよく言われました。それだけ米国の影響を受けやすいのです。しかも、米国の株価が下落すると、日本の株価はそれ以上に下落し、米国の株価が回復しても日本の株価はなかなか回復しないということも少なくありません。

 

最近では、「中国がくしゃみをすれば、日本が風邪を引く」と言う人もいます。事実、2015年8月には中国の景気が悪くなるという不安が連鎖して、世界同時株安が起こりました。

 

このように株式市場は、予期せぬ出来事によって大きく変動します。プロでも判断が難しい世界ですから、個人が堅実な資産運用をするのは至難の業です。本当の余裕資金で楽しみながら投資をするのであればよいのですが、将来、必ず必要となる老後資金などを運用するにはあまり向いていないと言わざるを得ないのです。

本連載は、2016年5月20日刊行の書籍『30歳から定年までで2億円つくるほったらかし資産運用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本書に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本書の内容は著者の個人的な見解を解説したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本書の情報を利用した結果による損害、損失についても、幻冬舎グループ、著者並びに本書制作関係者は一切の責任を負いません。投資のご判断はご自身の責任でお願いいたします。

30歳から定年までで2億円つくる ほったらかし資産運用術

30歳から定年までで2億円つくる ほったらかし資産運用術

宮園 泰人

幻冬舎メディアコンサルティング

年収減少、増税、年金不安・・・サラリーマンの老後はどん底貧乏間違いなし!! 「下流老人」「老後破産」・・・サラリーマンの多くが、老後の生活に不安を抱えています。定年後の安定した生活には最低1億円、ゆとりのある生…

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