(※写真はイメージです/PIXTA)

銀行の金利が一向に上がらないなか、不動産投資による家賃収入で悠々自適な老後生活を送りたい、と目論む人も多いのではないでしょうか。しかし、「アパート・マンション投資には意外な落とし穴がある」と、経済ジャーナリストの荻原博子氏は言います。荻原氏による著書『老後の心配はおやめなさい』(新潮社)より、詳しくみていきましょう。

待ち受けるのは「厳しい現実」

さらに、大家になると、アパートの維持費・管理費や固定資産税、各種保険料なども支払わなくてはなりません。これらの費用が年間250万円だったとすると、年間960万円の家賃から差し引けば、収益は年間710万円になります。

 

ここまでの計算は、部屋が常に満室という前提。けれど、賃貸の場合、それは考えにくい。特にアパートの場合、古くなればなるほど人が入らなくなります。ですから、稼働率を80パーセントと考えると、収入はさらに減って年間568万円。

 

加えて、最近の賃貸は、部屋にエアコンがあるのは当たり前で、レンジなどの設備をつけているものもあります。また、トイレや風呂釜が壊れたら、修繕代は大家が負担しなくてはなりません。これら諸々の費用を年間100万円だとすれば、収入は468万円となります。

 

しかも、毎月自分で家賃を徴収して歩く大家というのは少なくて、多くの場合、住民とのトラブルを避けるためにも、家賃の徴収などは不動産業者に委託していることが多いのです。この手数料が、少なく見積もって50万円。

 

すると、収入は418万円ということになります。

 

この時点で、利回りは3.8パーセントに下がっています。

 

古い物件は修繕費用もかさむため、買い手がつかない可能性も…

それでも3.8パーセントの利回りがあればいいと思うかもしれません。ただ、忘れてはいけないのは、収入だけでなく、返すお金。借りた約1億1,000万円に対する返済額は、なんと年間450万円です。収入が418万円あったとしても、返済するお金が年間450万円あるのですから、差し引き32万円の持ち出しということになります。

 

つまり、借金を返し終わるまでに、800万円の持ち出しになるのです。

 

25年後にやっと借金を返し終わった時には、物件は築45年になっています。古い物件は修繕費用もバカにならないので、買い手がいなくなっている可能性があります。8,000万円の資産が手元に残るわけでもないのです。

 

これでは、なんのために投資したのかわからない! ということがおわかりいただけたでしょうか。

 

 

荻原 博子

経済ジャーナリスト

 

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※本連載は荻原 博子氏による著書『老後の心配はおやめなさい』(新潮社)より一部を抜粋・再編集したものです。

老後の心配はおやめなさい

老後の心配はおやめなさい

荻原 博子

新潮社

親の介護に必要な額が3000万円?! 準備すべき自分の老後資金は2000万?! わずかな年金だって破綻したらどうする?! 増えない貯金、揉める相続、かさむ医療費……その心配、本当にするべきなのでしょうか。不安になるのは知らない…

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