4.債券
<現状>
●米国の10年国債利回り(長期金利)は、FOMCの結果を受けて、FRBが24年に複数回の利下げに動くとの観測が強まったことから、大幅に低下しました。パウエル議長は会見で、利下げに関する議論を始めたことを認めたため、FRBが「ハト派」に転じたとの見方が広まりました。
●ドイツの長期金利は、ECBが2会合連続で政策金利を据え置いたことや欧州景気の減速を受けて、先行きの利下げ観測から低下しました。
●日本の長期金利は、日銀が早期に金融緩和政策の修正に動くとの見方が後退したことや、米長期金利が大幅に低下したことから、低下しました。
●米国の投資適格社債については、株式市場の上昇を受けて国債と社債の利回り格差が縮小しました。
<見通し>
●米国の長期金利は、FRBが利下げに転じるとみられることから、緩やかに低下する展開を予想します。市場は利下げを一定程度織り込んでいるとみられるため、当面はもみ合うものの、景気減速とインフレの低下に伴い、徐々にレンジを切り下げていく展開を予想します。
●欧州の長期金利も、ECBが利下げに転じるとみられるため、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。
●日本の長期金利は、米長期金利が低下するなか、日銀によるマイナス金利政策の修正が意識されるため、一進一退の展開を予想します。
5.企業業績と株式
<現状>
●S&P500種指数の12月の予想1株当たり利益(EPS)は前年同月比+6.1%となり、4ヵ月連続で過去最高水準を更新しました。TOPIXの12月予想EPSは前年同月比+10.3%となり、7ヵ月連続で過去最高水準を更新しました。
●米国株式市場は堅調を維持しました。FOMCはハト派の内容と市場で受け止められ、FRBが2024年前半にも利下げに転じるとの観測が強まったことから、長期金利が大幅に低下したことを受けて、2ヵ月連続で大きく上昇しました。
●日本株式市場は、日銀が金融緩和策を維持したことから一時上昇しましたが、年末にかけての円高が相場の重荷となり、小幅安で引けました。
<見通し>
●S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は、24年1-3月期が前年同期比+7.4%、4-6月期が同+11.4%と予想されています。TOPIX採用企業の予想EPSは、24年1-3月期が同+22.8%、4-6月期が同+19.6%と、好調な業績が見込まれています。
●米国株式市場は、株価収益率(PER)の切り上がりによるバリュエーションの改善主導で上昇してきました。割安感はやや乏しいですが、底堅い企業業績が続くなか、地政学リスクの更なる悪化も限定的とみられるなど、投資環境の不透明感は和らいでおり、引き続き堅調な展開が予想されます。
●日本株式市場は、海外景気、為替、商品市況といった外部要因によって変動性が高まる局面もありそうですが、製造業における景気循環の底打ちに伴うEPS成長が見込めるため、業績相場の色彩を強めると期待されます。ただし、金融緩和政策の修正については見極めが必要となりそうです。