1.概観
【株式】
4月の主要国の株式市場は、まちまちの動きとなりました。米国株式市場は、雇用統計や消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が大きく後退して長期金利が上昇したことを受けて、調整しました。NYダウは6ヵ月ぶりの下落となりました。欧州の株式市場では、ドイツDAX指数が下落した一方、早期利下げ期待からポンド安が進んだことを受けて英FTSE指数が上昇しました。日本の株式市場は、米国株式市場の調整や中東情勢の緊迫化が重石となり、日経平均株価が4ヵ月ぶりに下落するなど、軟調な展開となりました。一方、中国株式市場は、中国当局の政策期待から投資家のリスク選好姿勢が強まり、上海総合指数、香港ハンセン指数ともに上昇しました。
【債券】
米国の10年国債利回り(長期金利)は、インフレの根強さを示す経済指標が相次ぎ、FRBの利下げ観測が大きく後退したことから大幅に上昇しました。ドイツの長期金利は、欧州中央銀行(ECB)が次回6月の利下げ転換の可能性を示唆したものの、米長期金利に連れて上昇しました。日本の長期金利は、米長期金利の上昇と円安が進行するなか、追加利上げの観測が高まったことから上昇しました。
【為替】
円の対米ドルレートは、日銀が4月会合で金融政策を維持したことを受けて、日米金利差が開いた状況が長く続くとの見方が強まり、大幅に下落しました。
【商品】
原油価格は、地政学リスクへの過度な警戒感が後退したことや、米利下げ開始が遅れることが景気を冷やし、原油需要を抑制するとの見方から下落しました。
2.景気動向
<現状>
●米国の1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.6%となり、前期の同+3.4%から減速しました。輸入の増加が下押し要因となりました。
●欧州(ユーロ圏)の1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.3%と、インフレの落ち着きを背景に3四半期ぶりにプラス成長となりました。
●日本の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.4%と、2四半期ぶりにプラスとなりました。設備投資が速報値から上方修正されました。
●中国の1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.3%と、市場予想を上回りました。生産や輸出の増加が景気の押し上げ要因となりました。
●豪州の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+1.5%と、前期から減速しました。物価高で個人消費が伸び悩み、前期比は+0.2%でした。
<見通し>
●米国は、大幅な利上げに伴う景気抑制効果や粘着質なインフレなどから、景気が緩やかに減速すると想定しています。ただし、雇用が安定しており、個人消費が底堅いことや、企業収益が回復傾向にあることから、景気の急減速は避けられ、軟着陸(ソフトランディング)に至るとみています。
●欧州は、ECBの金融引き締めによる景気抑制効果により、低成長が続くとみられます。ただし、インフレの鈍化による購買力の回復に加えて、労働力不足に伴う底堅い雇用、EU復興基金などの財政支援が景気を支えるため、腰折れはしないとみています。
●日本は、認証試験不正問題に伴う自動車減産や能登半島地震の影響で、1-3月期の実質GDP成長率がマイナスとなる可能性があります。しかし、インフレの鈍化と賃金の上昇、経済対策の効果、インバウンド消費の増加、堅調な企業収益を背景に、緩やかな成長軌道を辿る見通しです。
●中国は、不動産市場の低迷や海外景気の減速で需要不足が続き、若年層の雇用悪化の影響などから個人消費も力強さを欠くことから、景気の回復ペースが鈍化するとみられます。ただし、政府が拡張財政を継続することから、急激な減速は避けられる見通しです。
●豪州は、中国景気の減速に加え、利上げの累積効果や、粘着質なインフレで家計の実質可処分所得が圧迫されることから個人消費が力強さを欠き、当面景気が緩やかに減速するとみられます。ただし、年後半のインフレ鈍化や利下げ実施により、25年にかけては徐々に持ち直すとみています。