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アジア:マーケット動向
⇒【株式】まちまち、【通貨】概ね下落、【債券】金利上昇
【株式市場】
◆香港などが上昇する一方、ベトナムなどが下落
香港は、中国証券監督管理委員会が香港の国際金融センターとしての地位向上に向けた支援策を発表したことなどから上昇。また、良好な経済指標が発表されたマレーシアが上昇したほか、シンガポールも、長期金利が上昇するなか、大手銀行が株価指数を牽引。一方、通貨安圧力が高まったベトナムは下落し、オーストラリアもオーストラリア準備銀行による利下げ観測が後退したことなどから軟調。フィリピンは国家経済開発庁が成長率見通しを引き下げたことなどが嫌気された。韓国も、台湾の半導体受託製造大手企業が世界の半導体市場の伸び率予測を下方修正したことを受け、韓国を代表する電子機器・電気製品メーカーの株価が軟調だった。
【通貨(対米ドル)】
◆概ね下落
米ドルが4月に上昇基調にあったため、多くのアジア通貨は米ドルに対して下落した。一方、インフレ率の粘着性などから豪ドルは米ドルに対して上昇したが、小幅にとどまった。
【債券(国債)市場】
◆金利上昇
アジア国債利回りは上昇した。インドネシアでは通貨の安定性強化とインフレ圧力抑制のため6ヵ月ぶりに利上げが実施され、またオーストラリアでは物価指標上振れもあり、大幅な金利上昇となった。シンガポール、タイ、韓国、インドでは現行の金融政策が維持されるなか、中銀のインフレ指標への慎重姿勢も改めて確認された。
<※参照:各国の株価指数の名称>
●中国:上海/深圳CSI300指数、●香港:ハンセン指数、●韓国:韓国総合株価指数、●台湾:台湾加権指数、●インドネシア:ジャカルタ総合指数、●マレーシア:クアラルンプール総合指数、●タイ:SET指数、●ベトナム:ベトナムVN指数、●シンガポール:シンガポールST指数、●フィリピン:フィリピン総合指数、●インド:SENSEX指数、●オーストラリア:ASX200指数
中国<金融市場動向>
⇒株式はもみあい、元安は目先安定へ、金利はもみ合いながら低下
【株式市場】
◆政策期待が市場を下支え
中国証券監督管理委員会が株式相互取引(ストックコネクト)制度の拡充など香港の国際金融センターとしての地位向上に向けた支援策を発表したことを好感。また、中国政府による不動産市場における追加刺激策への期待感が高まったことも市場の押し上げ要因となった。投資戦略においては、引き続き構造的な成長分野の有力企業、政策のサポートを得ている企業、国際競争力のある企業、増配が期待される企業に着目し、ツーリズムや高齢化関連、環境関連や工場自動化などを長期目線では有望視できそうだ。
【為替・債券(国債)市場】
◆人民元は目先安定へ
米国の4月の雇用統計が落ち着いた内容になったため米国利下げ観測が拡大しており、人民元の対米ドルレートには上昇余地がある。また、人民銀行は市場レートが取引レンジ下限に近付いた3月下旬以降も基準レートをほぼ同じ水準で設定し、必要に応じて元買い介入を行っている模様である。この点は元安圧力が強くなっても変わらないだろう。また、日本で円買い介入や利上げがあるとしても大幅な円高への転換は想定しにくく、円に対する下落リスクは限定的だろう。
◆債券利回りはもみ合いながら低下する展開
中国では、人民銀行の金融緩和姿勢の継続や1-3月期の実質GDP成長率は市場予想を上回ったものの、月次の主要経済指標が概ね市場予想を下回ったことなどから、金利は低下基調で推移。その後は、人民銀行高官による国債金利の低下に対するけん制姿勢が意識されたことなどで、金利は上昇に転じた。目先は、先行きの中国経済の回復の鈍さが意識されつつ、追加金融緩和への期待が維持される展開は継続すると見込み、中国国債利回りはもみ合いながら低下する展開を予想する。
中国<マクロ経済動向>
⇒需要不足が継続
◆弱い需要と強い供給
4月の製造業PMIは市場予想を上回り、50.4となった。3月の50.8から低下した主因は季節性であろう。製造業PMIの構成要素を3月と比較すると、需要の代表である「新規受注」の寄与度は0.6ポイント低下したが、供給の代表である「生産」は0.2ポイント上昇した。需給ギャップの拡大を受けて、「製品価格」は7ヵ月連続で50割れとなっており、財市場で低インフレが続いていることを示唆した。また、需要不足を背景にサービス業PMIが低下したため、4月の非製造業PMIは市場予想を下回り、51.2へ低下した。
◆住宅価格の下落基調が続く
国家統計局が取りまとめている70都市の新築・中古住宅価格をみると、3月も新築・中古ともに引き続き下落した。住宅価格の下落基調が長期化することによって、家計部門の資産価値が目減りし、需要不足をもたらす構図が今後も続きそうだ。
◆需給ギャップの拡大続く
国家統計局が公表している季節調整値を利用し、前期比を計算すると、23年10-12月期以降、小売売上高のモメンタムは下向きに対し、鉱工業生産は引き続き上向きになっており、対照的な動きとなっている。小売売上高を需要の代表的な経済指標、鉱工業生産を供給の代表的な経済指標と解釈すれば、需要不足の状況で供給を増加させていることになる。この点は財市場で需給ギャップの拡大を通じて、生産者物価指数に下振れ圧力となっているとみる。このことが中国の金融政策が緩和に向かうことを支持するだろう。
(2024年5月9日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『株式市場は「香港などが上昇する一方、ベトナムなどが下落」…アジア・マーケット動向を振り返る【解説:三井住友DSアセットマネジメント】』を参照)。