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インド<金融市場動向>
⇒株式は底堅い動き、金利は低下余地を探る動き、ルピーは目先安定へ
【株式市場】
◆大手銀行が上昇
好決算を発表した大手銀行株の上昇が市場の押し上げ要因となった。一方でソフトウェア関連企業の株価は前月に続き軟調だった。引き続き、インドは安定的な経済成長が期待できることや、堅調な企業業績が見込めることなどから相対的に底堅い値動きになると想定。
【債券(国債)市場】
◆債券利回りは緩やかに低下余地を探る展開
政策金利の据え置きが続くなか、インフレ指標安定化の期待もあって長期金利はレンジ内の動きとなっている。今後も財政政策にサポートされ堅調な景気状況が継続しやすいが、24年年内の利下げ実施の可能性も意識されることで、債券利回りはもみ合いながら緩やかに低下余地を探る展開を想定する。
【為替市場】
◆ルピーは目先安定へ
米国の4月の雇用統計が落ち着いた内容になったため米国利下げ観測が拡大しており、インドルピーの対米ドルレートには上昇余地がある。しかし、雇用・インフレに上振れリスクが残されているため、米国利下げ観測が後退すればルピー安リスクが顕在化しやすい。また、中東情勢が緊迫し、原油価格が上昇する場合には、原油調達を海外に大きく依存しているインドでは輸入増加を通じてルピー安になりやすい。一方、日本で円買い介入・利上げがあるとしても大幅な円高に転換するとは考えにくいことから、対円での下落リスクは限定的だろう。
インド<マクロ経済動向・政策>
⇒循環的な景気モメンタムは堅調
◆総合PMIは引き続き50超え
4月の総合PMIは61.5と、50超えの高水準で前月からわずかに低下した。ただ、景気センチメントは明確に改善傾向を示している。製造業PMIは3月の59.1から4月には58.8へやや低下したものの、引き続き50を超えている。サービス業PMIは3月の61.2から4月には60.8へやや低下したものの依然50超えであり、消費センチメントは好調だ。インドでは2024年4月19日から6月1日まで7回に分けて総選挙の投票が行われる。選挙活動は消費センチメントにプラスに作用するだろう。当面、景気堅調を見込む。
◆循環的な生産モメンタムは上向き
2月の鉱工業生産は前年同月比+5.7%と市場予想を下回った。うち投資の代理変数である資本財生産は同+1.2%と、1月の同+3.4%から鈍化した。弊社で季節調整を行い、3ヵ月前比を計算すると、2023年11月を底に、鉱工業生産も資本財生産も循環的なモメンタムは上向きである。投資主導で生産活動が活性化している状況は製造業PMIとも整合的な動きである。
◆インフレ率はすでに沈静化
3月の消費者物価上昇率は前年同月比+4.9%と、引き続き目標レンジに収まった。金融政策スタンスは変わらないだろう。一方、期待インフレ率の上振れリスクがあるとすれば、原油価格の上昇だろう。中東情勢次第では原油価格の上昇は起こりうる。
ベトナム ←ピックアップマーケット
⇒株価は上昇へ、ドンは目先安定へ
【株式市場】
◆通貨下落圧力を嫌気
ベトナムドンへの下落圧力が高まり、ベトナム国家銀行(中央銀行)による金融引き締めに対する警戒感が高まったことなどから市場は下落。また、国内政治に対する不透明感が高まったことも下押し要因となった。海外からベトナムへの直接投資関連では、米アップルのCEOティム・クック氏が同国を訪問し、部品供給業者への投資増加方針を示したことや、ベトナムのIT企業であるFPTが米エヌビディアとパートナーシップを結んだことを発表。投資戦略としては、海外企業によるベトナム進出の恩恵が期待される銘柄、若い人口構成と所得増加の後押しがある消費関連銘柄、ツーリズム関連銘柄などを長期目線で有望視できそうだ。
【為替動向】
◆ドンは目先安定へ
米国の4月の雇用統計が落ち着いた内容になったため米国利下げ観測が拡大しており、ドンの対米ドルレートには上昇余地があろう。党序列4位の国会議長が汚職疑惑で4月下旬に辞任しており、政治不透明感は長期的にはドン安要因になりうるが、目先は米ドル反発がなければ、ドンの対米ドルレートは安定しやすいだろう。
【マクロ経済動向】
◆生産が持ち直しへ
4月の米ドル建て輸出は前年同月比+10.6%と、3月の同+13.0%から鈍化した。小売売上高は3月の同+9.2%、4月の同+9.0%とほぼ横ばい圏で推移したが、消費者物価上昇率が3月の同+4.0%から4月に同+4.4%へ加速したことから、実質値では伸びは鈍化したと判断できる。一方、鉱工業生産は3月の同+4.1%から4月には同+6.3%へ加速した。鉱工業生産の動きから実質GDP成長率は底打ちしている可能性が大きい。
(2024年5月9日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
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