(※写真はイメージです/PIXTA)

現役時代に収入が高く、退職金も恵まれている人は、老後も悠々自適。……そんな理想を思い描きがちですが、現実は厳しいものがあるようです。本記事では、大山さん(仮名/74歳)の事例とともに、老後のマネープランの組み立て方について、FPの小川洋平氏が解説します。

わずか4年で老後資金の大部分を失う

大山隆太さん(74歳)は、とある私立大学で統計学を専門分野として教えていた経験豊かな教授でした。学生ともよく一緒にお酒を飲んで交流し、慕われていました。

 

大山さんはもともと大手企業でマーケティング担当として活躍し、その実績から45歳のときに大学教授へと転身したのでした。大企業に勤務していたころと比べて収入は下がったものの、月収60万円と賞与も200万円以上と比較的高い水準にあり、若者の活力に触れて大きなやりがいを感じる大学教授という仕事は大山さんにとって天職だったのです。

 

そして、70歳で退職し、リタイア生活に入りました。

 

しかし、いざリタイア生活に入っても大山さんは学生達からも人気の先生です。

 

学生が卒業し社会人になったあとも、ことあるごとに学生達から相談を受け、その都度飲食店で話を聞き、お酒も交えながら愚痴を聞いたりアドバイスをしたりしていたのでした。そのときの飲食代も大山さんがほとんど支払っていました。

 

また、ゴルフが好きな大山さんは前職の同僚達とも毎週の様にゴルフに出掛け、老後の生活を楽しんでいました。

 

そんな生活を送り始めている大山さんは、6ヵ月後くらいには預金通帳の残高が減っていくことに気が付いてはいたものの、生活水準を下げようと行動することはありませんでした。

 

そんな生活を続け、退職からわずか4年後で2,000万円以上あった退職金は残り500万円程度になってしまったのです。

妻に家計管理をバトンタッチ

大山さんは学生たちと頻繁に食事をし、また毎週のようにゴルフに通い、これまでにお金に困った経験が一度もなく、現役時代からあまり貯蓄をする習慣がありませんでした。

 

そのため、年収は900万円程度ありながらも「退職金もあるから老後もなんとかなるさ」とリタイア後の資金をじゅうぶんに準備していなかったのです。

 

また、公的年金も一般の厚生年金ではなく私学共済で加入していた共済年金が支払われ、恵まれてはいるものの金額は月額にすると大体22万円程度、妻の美春さんと合わせて28万円程度です。

 

それに対し大山さんは毎月大体42万円程度支出しており、現役のころからあまり支出が減ることはありませんでした。

 

月収は28万円受け取れるのに対し42万円も支出していますので、毎月14万円、年間で約170万円ものマイナスが出ていることになります。

 

また、大山さんは退職した際、老後の楽しみにといって退職金で好きなスポーツカーを買い、2人の子供の結婚資金としてそれぞれ150万円ずつプレゼントしています。

 

そして、4年が経ったころ、妻の美春さんが「このままでは老後破産してしまう……」と不安に思い、節約生活へと踏み切ったのでした。

 

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