(※写真はイメージです/PIXTA)

現役時代に収入が高く、退職金も恵まれている人は、老後も悠々自適。……そんな理想を思い描きがちですが、現実は厳しいものがあるようです。本記事では、大山さん(仮名/74歳)の事例とともに、老後のマネープランの組み立て方について、FPの小川洋平氏が解説します。

初めての節約生活

それ以来、家計は美春さんが管理するようになり、大山さんは毎月お小遣いとして3万円を渡されることになりました。その結果毎週のように通っていたゴルフにも年に1~2回程度に抑えざるをえなくなり、趣味で買ったスポーツカーも売却することが決まり、教え子達と会うときも奢ってあげることはできなくなってきたのでした。

 

支出を減らしてきた大山さん夫婦ですが、今後必要になるであろう自宅の修繕費や、これから支出の大部分を占めるであろう医療費・介護費用などを考えると、まだ不安を払拭しきることはできません。

 

大山さんは老後になって楽しみにしていたものも制限せざるをえなくなり、現役時代の収入を懐かしく思って、涙するのでした。

大山さん個人の問題点

大山さんの問題点は、2点あります。

 

1点目はリタイア後に使いたいお金を把握していなかったこと。2点目は、使いたいお金に対して、どうやって捻出していけばよいかを計画していなかったことです。

 

大山さんにとっては教え子やゴルフ仲間との交流は自分の人生を豊かにするもので、飲食代をほとんど自分が出したり、毎週のようにゴルフに出掛けたりと、使い過ぎではないかと思う部分もありますが、それらがその人の幸せに繋がるならば、それ自体が問題というわけではありません。

 

自分が望む生活に対し必要なお金を使っても、なにかしら収入を得ることを考えたり、将来的にも家計が破綻しないのであれば自分の人生の満足度を上げることにお金を使ったほうがよいといえるでしょう。

 

そのため、自分がどのような人生を歩みたいのか、自分にとってどのような姿が理想なのかをイメージし、それを実現するためにはどの程度の支出が必要なのかを把握することが、まずは大事です。

 

理想の老後を実現するために必要な費用を大まかにでも把握し、公的年金でいくら受け取ることができるのかがわかったら、それに対し、以下の戦略を考えていくことになります。

 

・支出はどの程度に抑え、なにに優先的にお金を使うか

・いまある資産をどう運用し取り崩していくのか

 

場合によっては70歳でリタイア後も、非常勤講師などの形で大学に残ったり、他校の講師として働き続けたりするなど、収入を得ることもできたでしょう。大山さんにとって教授という仕事は天職だったようですので、収入を得るだけではなく、人生の満足度を上げることもできたと考えられます。

 

このように生活水準を維持しながら、老後のライフプランを立てることも可能なのです。そのプランに沿ってお金を使っていれば、妻に家計を管理され、節約生活を強いられることもなかったでしょう。

 

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