昭和天皇の信任を失ってしまった原因
田中は外交官・軍人を集めて東方会議を開き、対中国強硬方針を決定するとともに、山東出兵(1927~28)を断行し、日本人居留民の保護を名目に北伐に干渉しました(日本軍が国民革命軍と衝突する済南事件も発生)。
北京政府の中心は満州軍閥の張作霖で、日本は張作霖と結んでいました。
しかし、各地の軍閥は国民革命軍に敗北し、張作霖も北京から逃走すると、関東軍は弱体化した張作霖の排除と満州全域の直接支配を企み、本拠地の奉天に戻った張作霖を列車ごと爆殺しました(張作霖爆殺事件、日本では満州某重大事件として報道)。
このとき、田中は事件処理の甘さで昭和天皇の信任を失い、総辞職しました。
一方、張作霖の子の張学良は国民政府に合流し(北伐が完了し、国民政府が満州も含めて中国を統一)、抗日の姿勢を強めていきました。
1928年、「第1回普通選挙」が行われる
社会主義勢力の中に議会立法で労働者・農民の擁護をめざす無産政党が登場し(労働農民党など)、〔田中義一内閣〕が実施した第1回普通選挙(1928)では合計8名を当選させました。
しかし、非合法の共産党が労働農民党を指導するなど公然と活動したことに危機感を持った内閣は、三・一五事件で共産党員を検挙し、労働農民党を解散させました。
さらに、治安維持法の改正(1928)で最高刑を死刑とし、協力者も処罰可能としました(目的遂行罪)。また、東京警視庁に置かれていた特別高等課(特高)を全国に設置しました。
「復活した幣原外交!」国内問題に目を向ける
与党は立憲民政党(もと憲政会)に変わり、〔浜口雄幸内閣〕では幣原喜重郎が再び外相となりました。
日本はロンドン海軍軍縮会議に若槻礼次郎(もと首相・もと憲政会総裁)を全権として送り、米・英・日・仏・伊でロンドン海軍軍縮条約(1930)が結ばれ、補助艦の保有量を対米・対英で約7割としました。しかし、軍縮に反対する海軍軍令部・野党立憲政友会・民間右翼は、統帥権干犯を主張して内閣を攻撃しました。
憲法解釈上の通説では、天皇大権である統帥権(軍の作戦・指揮権)と編制権(兵力量の決定権)は別々の権限ですが、軍令部は、編制権は統帥権に付属すると解釈しました。
政府が軍令部の同意を得ずに兵力量を決定したのは、軍令部が行使する統帥権を侵害したことになる、という理屈です。浜口は東京駅で右翼に狙撃され、翌年総辞職しました。
山中 裕典
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