今回は、マンション管理組合の理事会でまず重視すべき議案について説明します。※本連載は、一級建築士・須藤桂一氏の書籍『まちがいだらけのマンション管理タブー集』(誠文堂新光社)の中から一部を抜粋し、マンション管理組合の理事や役員の方が間違えやすい点、その結果として生じる問題などについて、1つずつ具体的に取り上げ、わかりやすく解説します。

小さな問題から手をつけがちだが・・・

「ほのぼのマンション」のマンション管理組合では、やるべき課題が山積みでした。何から手をつけるべきか、さっそく理事のみんなで協議をしたのですが・・・。

 

理事長:大規模修繕工事、設備機器の更新、植栽保守の見直し、照明器具の電球購入費用の見直し・・・いろいろと課題がありますが、どこから手をつけましょうか。

 

――理事の大半は、サイレントマジョリティを決め込んで、何も言わず・・・。

 

理事長:ナンデさん、どうでしょう。

 

ナンデ:簡単なところからで、いいんじゃない。照明器具の電球とかさ。

 

理事長:そうですね。みなさん、どうですか。

 

理事たち:いいでーす。

「一番大きなケタの事案」から改善策の検討を

「今期最大の課題は、植栽の保守料金見直し」「照明器具の電球の購入費用の見直し」といった議案を検討している理事会をよく見かけます。いずれの議案も、全体のコストに比べて小さな金額であることにお気づきでしょうか。

 

私たちが皆さんに必ずお話をすることの1つに、「委託費用も修繕費用も、支出の見直しをするのであれば、ケタの大きな部分から検討するといいですよ」というアドバイスがあります。

 

なぜそう思うのかと言えば、どのマンションに行っても、小さな改革はよくできているのに大きなケタの事案は手つかずの状態だったからです。

 

例えばよく取り上げられる小さな改革の1つに、「共用部分の電気をLEDに変更しよう」という議案があります。確かにエネルギー政策上、省エネは大切ですが、実は電球をLEDに変更しても、年間数十万円の共用部分の電気料金のうち、2~3割下がる程度なのです。

 

なぜかと言えば、共用部分の電気の多くは給水ポンプ・エレベータ・機械式駐車場などに使われており、日中は消灯して暗いときだけに使用するものです。照明器具の稼働率はそもそも、あまり高くないのです。

 

もちろん、削減しないより削減をしたほうがいいのは当然ですが、せっかくテコ入れするならば、ケタの大きなところからメスを入れましょう。

 

また、大規模修繕工事も管理会社にお任せで、「一式」としか書いていない管理委託費用もジャブジャブの状態のマンションが多いようです。

 

管理委託費用も含めての「一式」表現は危険です。必ず積み上げ方式で積算されているはずですから、それ以上ドロップダウンできないという明細にまで項目を分類し、各金額を明確にしてから、そのうえでケタの大きな部分を着手するといいでしょう。

まちがいだらけのマンション管理 タブー集

まちがいだらけのマンション管理 タブー集

須藤 桂一

誠文堂新光社

分譲マンションの住人にとって、管理費や大規模修繕計画・長期修繕計画などの見直しは今や避けられない問題です。特に2000年以降、大量に供給されたマンションの多くは、現実にその問題にぶち当たっています。湾岸地域のマンシ…

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