「自分がやらなくても誰かがやってくれるよ」
これまでマンション住民とは交流がほとんどなかったオトナシさんは、最初のうちこそ周りに気を使って理事会で意見を言ったりしていましたが、慣れるにしたがい、サイレントマジョリティに逆戻りしてしまいました。
理事長:違法駐車の件で、何かいいアイデアがある方はいませんか。
理事たち:・・・。
理事長:(困ったな、まただんまりか)オトナシさん、どうでしょう?
オトナシ:(自分がやらなくても誰かがやってくれるよなー)特にありません。
理事長:意見がないようなので・・・管理会社に任せましょうか。
サイレントマジョリティには「工事関係者」も多い!?
前回説明した「サイレントマジョリティ=物言わぬ多数派」は、管理組合の8~9割を占めている圧倒的多数派層です。いったい、サイレントマジョリティを構成しているのは、どのような人たちなのでしょうか。
マンション住民のなかには、管理会社やゼネコン、工事関係の仕事に就いている区分所有者もいると思います。実はそういう人たちは自分のマンションの理事会には義務感で出席して、あたらずさわらずで何も発言せずにサイレントでいることがよくあるのです。
一方で、同じ屋根の下に住んでいる住民の1人として全体の調和を考えたり、特定の人から反感を買うのを恐れたり、色めがねで見られたくないといった心境から、1年間の任期を何もせずに人任せにしてしまう人たちもいます。
理事会の議事が適正に行われているのであれば静観するのもいいでしょう。しかし、「波風を立てたくない」という理由で、だんまりを決め込むようでは理事会運営に悪影響です。そういう人が多ければ多いほど、管理会社や工事会社の思い通りの管理組合になってしまうからです。
こうしたサイレントマジョリティのなかには、過去に理事を経験した人も含まれていますが、理事になったら、ただ理事会に出席をすればいいというわけではありません。この本を手に取ってくださった皆さんにはぜひともこれを機に、人任せにせず、自分が理事会の主体だと思って取り組んでいただきたいと思っています。
コミュニケーションを促す「恒例行事」の開催も有効
1人が意識を高く持ち主体的に取り組んだとしても、周りがともに行動してくれなければ徒労に終わってしまいます。周りにも主体的に取り組んでもらえる雰囲気をつくるには、理事同士のコミュニケーションが何より重要だと思います。
理事就任時の親睦会はもちろん、クリスマス会や花見、暑気払いなど、名目は何でもかまいません。気軽に集まれるようなイベントを、定期的に提案していくといいでしょう。その際、自費参加だと負担になりかねませんから、しっかりと予算を当てて、毎年の恒例行事にするのがポイントです。
ある70世帯程度のマンションでは、総会に毎年40~50人が出席して、議事も活発に行われています。そして、総会終了後に近所のお寿司屋を貸し切り、管理費から一人当たり5000円程度の予算の懇親会が開かれます。これがいつも大盛り上がりで、区分所有者の楽しみの1つになっています。
また別のマンションでは、理事になるとキックオフのミーティングが行われます。建物の施設見学会を実施し、ふだん見ることのできない設備などを見たり、自動火災報知器を発報させるなどの体験をいろいろして、終了後に集会室に集まりビールで乾杯となります。
このマンションでは、消防訓練も全員参加で恒例行事になっており、終わった後に懇親会が開催されているとか。こういったマンションでは人任せにできず、理事の順番が回ってくれば責任を持って取り組むのだろうなと思います。
区分所有者、そして理事のノミュニケーションもより大切なことです。ここに予算を当てて、恒例行事にしてみてはいかがでしょうか。
多くの人が無関心で行動しないことによって、管理会社の思いのままになってしまうという大問題を引き起こしてしまうのです。