(※写真はイメージです/PIXTA)

日本政府は約1,200兆円もの莫大な借金を抱えています。なぜ昔の人が作った借金を、いまを生きる私たちが背負わなければならないのでしょうか。本記事では、お金の向こう研究所の代表を務める田内学氏の著書『きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』(東洋経済新報社)から一部抜粋します。国と個人の「借金」の違いについて考えてみましょう。

「家庭の借金」と「国の借金」

優斗の楽観的な推測を、ボスはあっさり否定した。

 

「そんなことないで。政府が困ったら、借金返済のために、僕らは税金を取られるかもしれへん。僕らは利益も責任も共有しているからな」

 

じわじわと優斗は腹が立ってきた。

 

「どうして、僕たちが昔の借金を返さないといけないんですか」

 

目の前に座るボスを責めてもしょうがないが、ボスのようにソファに腰を沈めてくつろぐ老人の姿が思い浮かんだ。彼らは、後先考えずに、自分たちの生活だけを考えて借金を積み上げてきた。そして、今ごろ、ほくそ笑んでいるのだろう。借金を返さずに何とか逃げ切ったと。

 

「自分たちはラクをしておいて、そのツケを将来に回すなんてずるくないですか」

 

優斗の不満を聞きながら、ボスは「よっこらせ」と立ち上がる。冷蔵庫からペットボトルの麦茶を取り出すと、2人の前に1本ずつ置いた。ボスも同じものを飲んでいた。

 

「そうか、ずるいと思うんか。それはどうしてなんや?」

 

いつものパターンだと優斗は思った。彼が当たり前の質問をするときは、間違いなくひっかけ問題だ。だけど、素直に自分の考えを伝えるしかない。

 

「だって、昔の人たちは税金払わないで、借金してラクをしたわけでしょ。そのせいで、借金を返すときに、僕らがたくさん働いて稼がないといけないんですよね」

 

期待どおりの答えだったのか、ボスはニヤリとした。

 

「ほお。その話は興味深いな。昔の人たちがラクをしたせいで、未来の人たちが働かされると言うんやな。せやけど、タイムマシンは存在せえへんで」

 

「なんで、急にタイムマシンの話になるんですか」

 

「未来の人をここに連れてきて働いてもらえるなら、僕らはラクをして生活できるやろう。せやけど、そんなことは不可能や」

 

ボスの話もわからなくもない。アフリカ支援の堂本のオフィスでの話(善意が迷惑に…「途上国・アフリカ」に服を寄付すると「発展のさまたげ」になるワケ)を思い出した。過去の蓄積の上に僕らは生活している。逆に未来の人のおかげで生活するなんてできやしない。そうなると借金とは何だろうか。優斗は混乱してきた。

 

「でも、僕の兄は300万円分働いて返済しないといけないんですよ。借金をしたら後から働いて返すじゃないですか」

 

「家庭の借金と国の借金には大きな違いがあるんや」

 

もったいぶったボスの言い方にもどかしさを感じたが、いつもと変わらない様子に少し安心した。きっと検査入院の結果も問題ないだろうと優斗は思っていた。

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

注目のセミナー情報

​​【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』

 

【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!

次ページ内側と外側で働く人々
きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」

きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」

田内 学

東洋経済新報社

話題沸騰!Amazonベストセラー総合1位!! 大人も子どもも知っておきたい、経済教養小説! 絶賛の声、続々! 灘中学校・灘高等学校前校長 和田孫博 「本当に素晴らしい本。多くの若者に読んでほしい」 「本が苦手な…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録