かわいい孫の誕生をきっかけに、「生前贈与」を始めたA夫妻
81歳のAさんは、妻のBさん(80歳)と2人暮らしでした。Aさんは現役時代、上場企業で部長を務めており、BさんはAさんと結婚後、専業主婦として家庭を支えていました。
Aさんは定年後、趣味のゴルフに興じたり、奥さんと2人で温泉旅行に出かけたりと “悠々自適な老後”を謳歌。そんななか、ひとり息子Cさんが35歳(Aさん70歳、Bさん69歳)でめでたく結婚し、翌年には念願の初孫が誕生しました。
孫ができたことから、「贅沢をしていた分は孫のために使おう」と考えたA夫妻。預金は2,000万円ほどあり、年金受給額は2人合わせて月額30万円ほど。贅沢しなければ、年金だけで暮らしていけそうです。
Aさんは、以前知り合いが「相続税で大金を持っていかれるのは悔しいよな。だから俺は元気なうちに生前贈与して、子どもたちから感謝されるほうを選ぶよ。それに、年間110万円までは税金もかからないしな」と言っていたことを思い出しました。そこで、相続税対策も兼ねて、愛する孫へ「生前贈与」をすることに決めたそうです。
それからA夫妻は、孫名義の口座を開設。ゴルフや旅行の回数をセーブしながらコツコツお金を貯め、毎年1月4日(銀行の営業開始初日)に100万円を入金していました。
「孫の高校卒業祝いにこの通帳を渡そう。きっと喜ぶに違いない……」
Aさんは、愛する孫の喜ぶ顔を想像しながら入金を続けていました。しかし、贈与開始から10年後、Aさんは81歳で逝去。口座には1,000万円が貯まっていました。Aさんが亡くなって以降、Bさんはその口座に手をつけることなく、孫の18歳の誕生日に渡すという夫婦の約束を守るため、大事にしまっていたそうです。
その2年後。Bさんのもとに1本の電話が……税務署から「相続税の調査に伺いたい」との連絡でした。そして調査の結果、なんと孫に対する10年間の生前贈与が否認。追徴税額300万円を課されてしまったのでした。
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