愛する孫にお年玉…居酒屋経営のA夫妻に税務調査が入ったワケ
72歳のAさんと70歳の妻Bさんは、夫婦で居酒屋を営んでいます。手料理のおいしさと2人の人柄から、地元の“憩いの場”としてにぎわう人気店です。
住まいは1階が居酒屋で、2階が住居。AさんとBさんには娘が2人いますが、ともに県外に嫁いだため、いまは夫婦2人で暮らしています。普段は忙しく働いており、贅沢はしていないA夫妻。商売のほうは大儲けとはいきませんが安定しており、貯蓄も順調です。
2人の娘は、お盆と正月にそれぞれの孫を連れて帰ってきてくれます。お金の使い道がないA夫妻は、毎年計3人の愛する孫に「ひとり10万円」お年玉をあげていました。これは娘たちも喜ぶことから、「あわよくばもっと頻繁に帰ってきてくれないかな」という淡い期待も込められていたそうです。
しかし、そんなある日、居酒屋へ所得税の税務調査が入りました。
「確定申告は毎年期限内に行っているし、特別儲けているわけでもないのに、いったいなぜ?」夫婦が不思議に思っていると、税務調査官が口を開きました。
「経費についてですが、このお金はなんですか?」「ああ、これは……」A夫妻は、毎年孫にあげているお年玉を、経費として計上していたのです。
「所得税法上、この経費は認められませんね。残念ですが、追徴課税が発生します」
10年にわたり、孫へのお年玉を必要経費としていたA夫妻。合計200万円計上していたことで、Aさんは追徴課税が課されることになりました。
所得税の「必要経費」とは?
A夫妻は個人で居酒屋を営業しているため、事業所得を計算し毎年所得税の確定申告を行わなければいけません。
この際、事業所得は「収入金額-必要経費」として求めることとなりますが、必要経費として認められるものは、その総収入金額を得るために直接要した費用とされています。
具体的には、その年に生じた販売費や一般管理費、その他業務上の費用であり、たとえば飲食店の場合であれば、食材費や水道光熱費などが必要経費にあたり、配偶者や親族に支払う給与などは必要経費とはなりません。
大まかなものは下記のとおりです。
<必要経費となるもの>
地代家賃、水道光熱費、給料賃金、接待交際費、広告宣伝費、福利厚生費、租税公課、通信費など
<必要経費とならないもの>
配偶者や親族に支払う給与・家賃、個人事業主自身の食事代、所得税・住民税などの租税公課など
個人事業として必要経費を計上できるメリットは、必要経費を多くした場合、所得税を安く抑えられる点です。事業に関するさまざまな支出を経費計上することで、税額を最小限に抑えることができます。
一方、デメリットとしては、計上している必要経費が同業者よりも多いような場合脱税が疑われ、税務署から調査される可能性が高くなる点があげられます。また、銀行に融資を申し込んだ際、必要経費が多く計上されていると問題視され、融資額が減る可能性もあります。
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