税務調査官「残念ながら…」Aさんが犯した“致命的なミス”
Aさんの死後、相続税の申告は息子のCさんが行いました。
CさんはAさんが孫に生前贈与を行っていることは知っていましたが、契約書も特になく、毎年いくら振り込まれているかも知りませんでした。しかし、Aさんの死後に通帳を確認し、生前贈与額が合計1,000万円であることを確認。贈与税の非課税範囲内で行っていたため大丈夫だろうと、この分を含めずに相続税を申告していたのです。
税務調査官「残念ですが、お孫さんへの生前贈与は、贈与の実態がないため認められません。この預金通帳の1,000万円はお孫さんのものではなく、あくまでAさんの名義預金となります。したがって、この分も相続税の申告に含めて計算してください」
さらに、Aさんは相続税の税率が30%であったため、相続税の追徴税額は300万円に。そのうえ、ペナルティとして加算税と延滞税も課されることになりました。
あまりに予想外……まさかの事態に、BさんもCさんも絶句。とにかく、専門家の意見が聞きたいと、筆者のもとに訪れたのでした。
中途半端な知識が招く「追徴課税」の落とし穴
今回の原因は、孫へのサプライズを目的に“こっそり”生前贈与していたことです。
実際、「預金を子や孫に管理させたら無駄遣いするのではないか」「でも、子の将来のために役立ててほしい」などと、親心から子に知らせずにこっそり贈与を行っているケースが多いのですが、客観的な証拠がないと贈与とみなされず、今回のように子が追徴税額と加算税等を支払うこととなります。
また、今回のように毎年110万円以内の贈与を10年間行う場合、“これは最初から総額1,000万円を贈与する約束であった”とみなされた場合「定期贈与」に該当し、1,000万円に対して贈与税が課されます。これを避けるためには、毎年同じ日に贈与しない、金額を同じにしないといった工夫が必要です。
なお、「あえて110万円を超える贈与を行い、贈与税の申告と納税を済ましているから私は大丈夫!」とも思わないでください。申告を行っている場合であっても、贈与の“実態”がない場合はやはり否認される可能性があります。
そこで、贈与を否認されないためにも、次のポイントに注意しましょう。
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