お金の格差と暮らしの格差
「たしかに、稼いでいる所得や持っている資産の格差は広がっているかもしれん。せやけど、大事なのは、暮らしぶりやと僕は思うんや」
ボスの言葉に、優斗は首をかしげる。お金があれば、欲しいものが買えるし、暮らしは良くなるはずだ。
「お金の格差も暮らしの格差も同じじゃないですか」
ボスは少し考えてから、優斗に聞いてきた。
「優斗くんの家にはテレビはあるやろ?」
「そりゃ、ありますよ」
優斗の家には、2階の食卓に家族用のテレビがあるし、1階の店舗にも、寄贈された大型のテレビがある。
「だけど、僕はあんまり見ないです。スマホで動画を観ることが多いんで」
「今は、そういう時代やな。昔は、白黒テレビは超高級品やった。サラリーマンの給料数年分の価格やったんや。せやから、僕が小さいころは、テレビなんて金持ちの家にしかなかった。今でも僕は小さいんやけどな。ワッハッハッハ」
ボスの自虐的なセリフに、優斗は笑いを押し殺して聞き返す。
「スマホもない時代に、テレビもなかったらヒマじゃないんですか」
「大人はラジオを聴いたり新聞を読んだりしとったわ。僕ら庶民の子どもは、外で泥んこになって遊んでいたもんや。娯楽といえば、駄菓子でも食べながら、『黄金バット』の紙芝居を観ることやった」
「へえ。そんな時代があったんですね」
優斗は紙芝居を見つめる子どものボスを想像してほほえましく思った。それと同時にテレビと紙芝居の格差に啞然とした。
「庶民と金持ちで、かなりの生活の格差があった時代や。時が経って、庶民にとっての紙芝居はスマホに替わった。ほな、今のお金持ちが使っているものは何や?」
「目の前の大金持ちはスマホを使っていますよ」
「ご名答やな」
と言って、ボスはポケットからスマホを出した。そのスマホケースは黒くてシンプルで、優斗のケースよりも地味だった。
「僕は小金持ち程度やけど、大金持ちが使うのもスマホや。彼らも検索エンジンで調べ物して、SNSを使う。昔と違って情報の格差はほとんどあらへん。ネット通販も格差を減らしているやろう。使用人がいなくても家まで運んでもらえるのは、庶民も大富豪も同じや。それに、どこにいても同じ物が手に入る。その意味では、地域格差は減っているやろな」
優斗は部屋の中を見回した。この部屋にあるビリヤード台にしても、本棚に並ぶ分厚い本にしても、自分の家にはないものだが、ビリヤードが貴族の遊びというわけではないし、図書館に行けば大体の本は読むことができる。現代社会において、フランス革命のときほどの暮らしの格差があるとは言えないというのも、わからなくもない。
「それと、もう1つあるんや」
もったいぶった顔をしたボスは人差し指を立てて聞いてきた。
「今の僕の話には、もう1つ大事な事実が隠されていたんや。それには気づいたやろか」
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