(※写真はイメージです/PIXTA)

歴史上「ハイパーインフレ」は何度も起きており、その原因は「紙幣の大量発行」だといわれています。では原因がはっきりしているのに未然に防ぐことができないのは、なぜなのでしょうか。本記事では、お金の向こう研究所の代表を務める田内学氏の著書『きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』(東洋経済新報社)から一部抜粋し、ハイパーインフレの本質について考えてみましょう。

『お金は偉いのか?』…疑問に対するボスの答え

「わからなくなったら、サクマドルの話(紙幣自体には何かを生み出す力はないという話)を思い出すことや。お金はただの紙切れや。お金の力に惑わされたらあかんで」

 

ボスの言うとおりだ。サクマドルを配るだけで食料不足が解決するはずがない。ところが、お金と聞くと何か特別な力でもあるような気がしてしまう。ボスが、さらに解説を続ける。

 

「ハイパーインフレで失敗する国は、生産力の不足をお金という紙切れで穴埋めできると勘違いした国や。しかし、お金が直接パンに化けるわけやない。自然の恵みや働く人たちがおって、生産力があるから作れるんや。ジンバブエの生活が苦しくなったのは、お金が増えすぎたからやない。物が作れない状況にあったからや」

 

ひととおり解説が終わると、あぐらをかいていたボスが座り直した。そして、「さて、優斗くん」と改まった声を出した。

 

「100人の国の話には続きがあるんや。お金がえらいと信じる人たちは、もっとお金を配れと叫んでデモ行進をした。しかし、他の人たちは災害で壊れたパン工場をせっせと修理した。どっちの行動が正しいか。もう明白やろ。これが、『お金はえらいのか?』という君の質問への答えや」

 

トンカツ屋のえらそうな客が、お金を配れと叫ぶまぬけな人たちに重なった。そして、工場を修理している人たちの中に両親の姿が見えた。

 

胸の中の鉛玉が少し溶けた気がした。

 

 

田内 学

お金の向こう研究所

代表

 

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