今回も、法人化によって得られるメリットを見ていきます。今回は、さまざまな支出を法人の経費として算入できるメリット等を説明いたします。※本連載は、ランドマーク税理士法人の代表税理士・清田幸弘氏の著書『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、お金持ちの人にこそ知ってほしい「資産を残す方法」をいくつか紹介します。

車両費や保険料等の支出を経費として算入

(5)経費の幅が増える

実態として、「業務に使用している」「収入を得るために必要な出費である」ことがあきらかであれば、経費の計上ができます。以下、経費として認められる例を挙げてみます。

 

○会社の経費で「高級車」を買う

たとえば、「高級車」を購入するのも節税のひとつです。1000万円以上するメルセデス.ベンツでも、「実際に、業務に使用している」「ベンツに乗る必然性がある」のなら、経費として認められます。

 

節税対策として高級車を購入する場合は、「新車」ではなく、「4年落ち以上の中古車」が狙い目です。なぜなら、「4年落ち以上の中古車」であれば、1年間で全額を経費にできるからです。ですが、新車の場合は「6年」に分割して経費にしなければなりません。ですから、1年目の経費だけを見ると、「中古車のほうが節税効果は高い」わけです。

 

会社名義ではなく、社長個人がクルマを購入し、「会社で経費化する方法」もあります。会社が社長個人からクルマを「借りる」契約を結べばいい。そうすれば、ガソリン代、高速代、保険料、車検代などが「会社の経費」として認められます。

 

社長が「使用料」を受け取るときは、個人と法人間で「賃貸借契約」を作成します。ただし、会社が社長に使用料を支払うと、社長の収入が増えることになり、確定申告が必要になります。会社の経費が増えて節税できても、社長個人の税金が増えてしまっては意味がありませんから、「使用料を高くしすぎない」などの配慮が必要です。

 

○中小企業を助ける「2つの共済」に加入できる

 

【小規模企業共済】

「小規模企業共済」は、「個人事業をやめたとき」「会社の役員を退職したとき」などの生活資金をあらかじめ積み立てておく共済制度です。払い込んだ掛金は、事業を廃業したときなどに、「退職金」として受け取ることができます。

 

払い込んだ掛金は、「全額」が所得控除の対象です。掛金は「月額1000円から7万円」の範囲で自由に設定でき、最大で「年間84万円」の所得控除が受けられます。

 

「小規模企業共済」は、個人事業主でも入ることができますが、「会社の役員」も加入することができるので、家族を役員にしておけば、家族の掛金も所得控除が受けられます。

 

【経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)】

経営セーフティ共済は、取引先の倒産による「連鎖倒産」から中小企業を守る制度です。売掛金債権等が回収困難となったときに、共済金の貸付けが受けられます。掛金月額の上限額は「20万円」です。税法上、納付した掛金は、損金に算入することができます。

 

○「企業版ふるさと納税」が使える

「ふるさと納税」は、地方自治体に寄附をすると税金の控除が受けられる制度です。企業が地方自治体に寄附した場合、「特定寄附金」という扱いとなります。

 

特定寄附金は、全額損金に算入できるので、税金対策としては効率的です(最低寄附金額は10万円)。全額を損金にすることで、「約3割」の税金が戻ってきます。そのうえ、寄附金額の2割が法人住民税.法人税の税額控除になり、寄附金額の1割が法人事業税税額控除になります。

 

○法人で「生命保険」に入ると経費にできる

個人の場合は、一般の生命保険に加入しても、保険料は必要経費に算入することはできません。確定申告をする際に、最大4万円の所得控除(生命保険料控除)があるだけです。

 

ですが、会社の場合は、社長や家族従業員にかけた生命保険料を経費にする(損金にする)ことが可能です。掛金の全額または半額が会社の損金になります。

 

被保険者が亡くなった場合、保険会社から支払われる保険金は「会社」の所得となるので、残された親族は「死亡退職金」として受け取ります。前述したとおり、死亡退職金は「500万円×法定相続人の数の範囲内」については非課税です。

自社株をあらかじめ承継することで相続に備える

(6)会社の所有財産には相続税がかからない

個人事業の場合、経営者が死亡すると、すべての財産が相続の対象になります。ですが法人の場合、会社の所有財産には相続税がかかりません。

 

財産をそのまま相続させれば相続税がかかります。けれど、会社の資産は株主のものです。自分の子どもをあらかじめ会社の株主にしておけば、相続税はかかりません(経営者が所有していた株式は相続税の課税対象になります)。

本連載は、2016年10月3日刊行の書籍『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

お金持ちはどうやって 資産を残しているのか

お金持ちはどうやって 資産を残しているのか

清田 幸弘

あさ出版

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