家政婦への「全財産の遺贈」に実娘が反発
相続は「争族」と言われることもあるように、たとえ家族であっても、遺産分割でもめることになりかねません。
2016年1月の「産経ニュース」に、
「実録・家政婦は見た! 『全遺産はあなたに』の遺言有効 3000万相当持ち去った実娘2人敗訴」
という記事が掲載されました。
2011年に97歳で死去した資産家の女性が、「遺産はすべて家政婦に渡す」と遺言に記したのですが、実娘2人が「遺言は母親を騙して作成させたもので無効だ」と主張。家政婦と実娘の間で、相続をめぐる訴訟が起きました。
遺産を持ち出した(約3000万円を自分の口座に移した)実娘に対し、家政婦が「遺産の返還」を求めたのです。
問われたのは、遺言の効力です。
裁判所は「介護せず資産のみに執着する実娘2人と違い、50年以上、資産家女性に献身的に仕えてきた家政婦に対し、自己の財産をすべて譲ろうという心境になったとしても、不自然なことはない」と判断し、家政婦の女性が全面勝訴。実娘側に持ち出した全遺産の返還を命じています(参照:産経ニュース)。
このケースのように、遺言を残したからといって、「争続を100%防げる」わけではありません。
ですが、早いうち(元気なうち)に、相続対策(争続対策)を行っておけば、多くのトラブルを未然に回避して、「もめない相続」を実現することができます。
法定相続人に認められる「遺留分」
遺言書があれば、法定相続人以外の人にも、遺産を残すことができます。ですから、「子どもには1円も残さない」「◯◯に全財産を相続させる」と書くことができます。
しかし、遺言書の効力も100%ではありません。
法定相続人には「遺留分」が認められているからです。
遺留分とは、一定の相続人のために、法律上必ず残しておかなければならない遺産の一部分のことです。
仮に兄弟が2人いて、遺言書に「すべての遺産は長男に譲る」と書いてあったとしても、次男が遺留分の権利を主張すれば、一定の範囲内で取り戻すことができます(遺留分減殺請求と言います)。