遺品整理中、ベッドの隙間から出てきた「1枚のチラシ」
群馬県在住の佐藤克昭さん(仮名・88歳)は、腎臓病を患っており、長い闘病生活の末、逝去。奥様の紗代子さん(享年81歳)はすでに3年前他界していました。
克昭さんと紗代子さんには、2人の娘さんがいます。長女の真里奈さん(仮名・55歳)は、結婚して実家を出たあと、長いあいだ遠方暮らし。一方、次女の百合子さん(仮名・50歳)は、未婚で実家暮らしを続けていました。
そのため、両親の介護は実家にいる百合子さんがすべて1人で担っていました。真里奈さんに協力を仰いでも、「子育てでそれどころではない」「遠くて手伝いに行けない」「あんた、結婚もしないで実家に住んでるんだから、少しは親孝行しなさいよ」などと、いつも断られてしまいます。真里奈さんが実家に顔を見せるのは、年に1度あるかないか程度でした。
ギクシャクした関係ではあったものの、世間体を考え、克昭さんの葬儀やさまざまな手続きが終わるまでは我慢しようと、仲のいい姉妹を演じていた2人。無事に克昭さんの葬儀を終え、遺品整理をするために部屋の掃除をしていたときのことです。
不動産も預貯金もすべて次女へ…遺言の内容をめぐって姉妹は「大喧嘩」に
百合子さんが、克昭さんが使っていた介護ベッドのマットレスとヘッドボードのあいだになにかが挟まっているのを見つけました。そっと取り出してみたところ、どうやらただのチラシのようです。「なんだチラシか」捨てようと思い拾い上げると、裏になにか書いてあります。
遺言書
遺言者佐藤克昭は、本遺言書により次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する下記の土地・建物を、次女佐藤百合子に相続させる。
(1)土地
所在 群馬県桐生市……
地番 1番1
地目 宅地
地積 100平方メートル
(2)建物
所在 群馬県桐生市……
家屋番号 1番1
種類 居宅 構造 木造2階建
床面積 1階100㎡
2階100㎡
第2条 次女佐藤百合子に以下の遺言者名義の預貯金を相続させる。
・三井住友銀行 銀座支店 普通預金 口座番号23456
令和○年○月○日
群馬県桐生市……
遺言者 佐藤克昭 ㊞
「これ、遺言書だ……」百合子さんは、真里奈さんにチラシの裏を見せました。すると、内容を読んだ真里奈さんは、血相を変えてこう言います。
「な……そんな落書きみたいなものが、遺言として有効なわけないじゃない!」
それまで静かに作業していたはずが、打って変わって騒ぎ立てる真里奈さん。そんな姉を見て、百合子さんも黙ってはいられません。
いままで腹に溜め込んでいた鬱憤を吐き出すように、百合子さんは言いました。「これまで親の介護もぜんぶ私がやってきたんだから、お父さんが私に相続したいって思うのは自然なことじゃない?」
対する真里奈さんも負けじと言い返します。「前も言ったと思うけど、子どもはまだ小さくて子育てで手一杯だし、家が遠いんだから介護に協力できないのは仕方ないでしょ! 未婚のあなたと違って、結婚して両親を安心させたこと自体が親孝行なんだし、長女である私にも相続する権利はあると思うけど!」
ここで、2人の怒鳴り声を聞きつけ、叔母の紀子さんが止めに入りました。
「ちょっと2人とも、いい加減にしなさい! ここで言い合っててもらちが明かないんだから落ち着いて。知り合いに司法書士がいるから、相談に行きましょう」
そうして、紀子さんは2人を連れて知り合いの司法書士事務所へ相談に行きました。
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