(※写真はイメージです/PIXTA)

親が亡くなると、さまざまな手続きや葬儀の準備等にお金が必要です。ところが、亡くなった親の銀行口座が凍結されてしまい、直近の支払いに困る場合は少なくありません。今回は、口座が凍結されてしまったときに活用できる「預金の仮払い制度」の仕組みと注意点等について、司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

なぜ口座は凍結されるのか?

銀行は、口座の名義人の死亡を把握した時点で、該当の口座を凍結します。なぜなら原則として、人が亡くなるとその人の財産はすべて「相続財産」となるからです。

 

これは相続トラブルや不正な引き出しを防ぐための銀行側の措置です。遺産分割が完了するまでは、誰がそのお金を受け取るのかが確定していないため、銀行は「トラブル回避のために口座を止める=凍結する」対応を取るのです。たとえ家族であっても、名義人が亡くなったあとに勝手にお金を引き出すことはできません。

葬儀費用が払えないときに使える「預金の仮払い制度」

ところが、口座が凍結されると葬儀費用などの急な支出に対応できず、困る人も出てきます。そんなときに利用できるのが、2020年に新設された「預金の仮払い制度」です。

 

制度創設以前は、被相続人(亡くなった方)の預貯金は、遺産分割協議が終わるまで1円も引き出せないのが原則でした。

 

しかし、これでは葬儀費用などの緊急資金が用意できないという問題が多発したため、家庭裁判所の関与や相続人全員の同意がなくても、一部を払い戻せる仕組みが導入されたのです。

仮払いできる金額には「上限」がある

便利な預貯金の仮払い制度ですが、引き出せる金額には上限があります。上限額は、以下のうちの、いずれか低いほうの金額です。

 

●死亡時の預貯金残高×法定相続分×3分の1

●150万円

 

たとえば、被相続人の預金が300万円の場合の計算式は下記のとおりとなり、

 

300万円 × 1 × 1/3 = 100万円

 

「100万円」の仮払いを受けることができます。

利用時の注意点

一見便利な制度ではありますが、注意点もあります。

 

まず、仮払いを受けた相続人は「相続財産を受け取った」とみなされる可能性があります。そのため、あとから「やはり相続放棄をしたい」と思っても、放棄が認められないケースがあるのです。それを考えると、預金の全容や借金の有無がわからないうちは、安易に引き出さないほうが安全だといえるでしょう。

 

また、この制度を利用する場合、本当に必要な金額に限定することが大切です。必要以上に引き出すと、お金の使途について相続人の間で揉め事が起こるリスクがあるからです。

 

このような注意点がある以上、利用は最終手段と考え、事前に対策を立てておくことが有効だといえます。

 

葬儀費用が心配であれば、葬儀会社のなかには、前払いのプランを用意しているところがありますので、そのような先を探して契約しておく方法があります。また、相続人全員であらかじめ「このお金は葬儀費用にする」と合意したお金を用意しておくという方法もトラブル予防に役立ちます。ほかにも、生命保険金を葬儀費用に充てるように設計しておくのも有効です。

仮払い後の正式な引き出し手続き

仮払い制度を利用したあとの残りの預金を引き出すには、通常の相続手続きが必要です。

 

銀行ごとに提出書類は多少異なりますが、主に以下の書類が必要となります。

 

●被相続人の戸籍一式

●相続人全員の戸籍

●各相続人の本人確認書類

●遺産分割協議書および全員の印鑑

●遺言書(ある場合)

 

遺言書がある場合は、必要書類が簡略化されることもありますが、詳細は各金融機関に確認しましょう。

トラブルを防ぐための生前準備

先述した通り、預金の仮払い制度を利用せずにすむよう、生前の元気なうちに準備をしておくことが重要です。具体的には、家族で葬儀費用の支払い方法を共有しておく、あらかじめ信託や生前贈与を検討しておく、といった方法が考えられます。

 

相続手続きは、銀行だけでなく、不動産・年金・保険などにも関わってきます。

 

だからこそ、元気なうちに整理を進めておくことが、家族への大きな思いやりとなります。

まとめ

人が亡くなると、その人の銀行口座は必ず凍結されます。

 

ただし、「預金の仮払い制度」を利用すれば、葬儀費用などの一部を引き出すことが可能です。とはいえ、相続放棄ができなくなるなどのリスクもあるため、制度を利用する際には慎重な判断が求められます。

 

相続後の混乱を避けるためにも、生前の準備と家族間の共有が最も重要です。

 

「いざという時に困らないように」今のうちに備えておくことをおすすめします。

 

 

加陽 麻里布
司法書士法人永田町事務所
代表司法書士

 

 

注目のセミナー情報

【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション

 

【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録