(※写真はイメージです/PIXTA)

いつまでも実家に居座り、働く様子のないわが子。このままでは、自分たちの生活すらいつまでもつかわからない……現代の日本では、こうした悩みを抱える高齢者世帯が少なくありません。昨今深刻化している「8050問題」の実態と、家庭を崩壊させずにこの状況から抜け出すための対処法について、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、事例をもとに解説します。

生活保護の受給よりも前に心配な「相続問題」

無職の息子に相続税の心配?

実は、息子には相続税が課税される心配があります。

 

A夫婦間の遺産相続では、配偶者の税額の軽減により相続税は課税されないでしょう。しかし親から息子へ、相続税の基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」以上の金額を相続すれば、相続税の対象になります。

 

ひとり息子の基礎控除は3,600万円ですから、生活保護どころか相続税の対策が必要になる可能性もあります。息子が働き収入があり、親の貯蓄が減らなければなおさらです。

 

とはいっても、まずは息子が収入を得るため、また心身の健康のためにも、仕事に就けるように支援することが大切です。そしてA夫婦が銀行に預金しているだけの4,000万円を、相続税対策を含め有効利用することも大切です。

 

筆者はここまで両親に話した内容を参考に、親子関係修復のためにも今後について親子で話し合うことを提案しました。

 

A夫婦が涙を流して喜んだ息子の変化

後日、Aさんから連絡がありました。夫婦は筆者の事務所を訪れたその日の夕食後、筆者から聞いた話も踏まえ、一方的ではありましたが息子に話したそうです。最後に「よくわからんが、日本で働く必要がないと思うんだったら、お前が働けると思った外国へ行けばいい。とにかくこのまま変わらないなら、家から出ていってもらう」と、強い口調で伝えたそうです。

 

Aさんが話し終えると、息子はなにか言いたそうでしたが、そのまま自分の部屋に戻ったそうです。そして翌日、息子は少し緊張した表情で、ハローワークに行ってくると家を出ていったといいます。

 

スーツを着て午前中から外出する息子を見送ったA夫婦は、それだけでもたまらなく嬉しく、思わず泣いてしまったと恥ずかしそうに話してくれました。

 

 

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。
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