年金月22万円、平均的収入の70歳夫婦“月並み暮らしの老後”のはずが…人生初の大金「退職金2,000万円」を手にした〈普通のサラリーマン〉の末路【FPが解説】

年金月22万円、平均的収入の70歳夫婦“月並み暮らしの老後”のはずが…人生初の大金「退職金2,000万円」を手にした〈普通のサラリーマン〉の末路【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本年金機構が提示している元会社員の夫と専業主婦の妻が受給する年金額のモデルケースでは、月に22万円とされています。これに退職金が加わることで、老後の暮らしは安泰、と安心する夫婦も多いようですが……。本記事では、Eさんの事例とともに、老後のマネープランの注意点についてFPの牧元拓也氏が解説します。

退職金で気が大きくなる元サラリーマンたち

会社からの給料と比べて年金額が減っても、何十年も続けてきた生活水準を下げるのはなかなか難しいものです。昔から浪費癖がある方は、無意識のうちに無駄遣いをしてしまっているのではないでしょうか。


また、高級店での外食やブランド物の衣服など、高級志向の方は特に生活水準を下げるのが心のブレーキがかかりやすいでしょう。老後のゆとりある生活のための上乗せ額を使う理由として、日常生活の充実が旅行やレジャーに次いで多くなっています。また、日々の時間にゆとりができ、退職金という大金が入ったことで気が大きくなり、いままでより外食の回数が増えたり、趣味のゴルフに使うお金が増えたりすることで、実際には生活水準が上がってしまうこともあります。


Eさん夫婦は高級志向ではありませんが、旅行の回数が増えたり、孫や子供にねだられるとケチだと思われるのが嫌で、なんでも買ってあげてしまうなど、いわゆる「見栄消費」が大きくなってしまっていました。ただ、使い過ぎという感覚はなかったのですが、気づかぬ間に収入の2倍弱のお金を使ってしまっていたのです。

インフレという老後破産への追い風

生活水準を変えられないことにダブルパンチとなるのがインフレ(物価上昇)です。生活水準を変えていなくても、物の値段が上がることでおのずと生活費は増えていきます。

 

2023年の物価上昇率は2%を超える見通しです。Eさん夫婦は、資産をすべて預貯金に預けているため、普通預金の金利年0.001%分しか増やせていないどころか、物価上昇のほうが大きく、預金の価値は目減りしてしまっています。物価動向によって年金の支給額は毎年調整されていますが、増額は現役世代の負担増につながるため、あまり期待はできません。

豊かなセカンドライフを送るには

長年働いてきて、ようやく訪れたセカンドライフは自分が好きなことに時間を使って自由に楽しみたいですよね。生活水準を下げて細々と生きるのも嫌ですが、これくらい大丈夫だろうと思い、どんぶり勘定でなにも気にせずにお金を使い、足りなくなってどうしようもなくなったあとに後悔するのは避けたいところです。


お金の入り口と出口を把握することは、どの年代においても大切ですが、今後の収入増加は見込めないセカンドライフ層においては重要です。特に最近は決済のほとんどがキャッシュレス化によって、なににいくら使っているかが見えにくくなり、お金を使う感覚が希薄になりがちです。


Eさん夫婦は、お金の目減りを減らすために無駄な支出を減らし、週3日近所の飲食店で働き、預貯金の一部を運用に回しながら取り崩していくことにしました。75歳まで月10万円の収入と預貯金1,500万円を投資信託に充て、75歳以降は運用しながら取り崩すと、資金寿命は約10年延びる計算になります。これにより、最多死亡年齢(男性が88歳、女性が92歳)までの見通しを持つことができました。


老後の生活を不安なく安心して過ごすために、現状の把握と必要な対策を考えてみてはいかがでしょうか。
 

 

牧元 拓也

ファイナンシャルプランナー

株式会社日本金融教育センター

 

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