タワーマンション「低層階」に住むメリット
勝ち組が多く暮らすタワーマンション。実際にタワマンに暮らす人々の様子をSNS等で垣間見ると、多くが高層階からの眺望を誇示するかのような写真を掲載している。
しかし、タワマンのすべてが高層階なわけではなく、当然だが、一般的な低層マンションと同じ程度の階数の住居もある。だが、彼らの暮らしぶりをネット等で目にすることは多くない。
ある不動産会社の営業マンは、タワマンの低層階に暮らすのは意外にメリットが多いという。
「まず、高層階よりも価格が安いということです。あとは万一の災害等でエレベーターが止まっても、外への出入りが圧倒的に楽であるということがあげられます」
これらは、タワマン生活を知らない人でもおおよそ予想がつくが、もちろんそれだけではない。
「タワマンはだいたい10~15階ぐらいまでが低層階といったイメージですが、その上の中層階部分に、パーティルームやゲストルームが配置されていることが多いのです」
共用部を建物の真ん中に置けば、高層階の住人も低層階の住人も同じ程度の時間で到達できるだろう…という意図があってのことらしい。ゲストルームが建物の中層階にある場合、その近くの階に住まいがあれば、親戚を泊めたときにも行き来がしやすく、便利なのだという。
ラウンジが最上階にあるタワマンもあるというが、最上階は高値で売却できることから、多くはペントハウスに使う。わざわざよい場所に共用部を置いても、あまり儲からないからだ。
「私もタワマンを販売していますが、お客様を低層階の部屋にご案内してみると、『こんなに低いところ…? と思っていたけれど、ゲストルームが近くて以外に便利だね』と喜ばれることも多いです。実際、私も友人が暮らすタワマンに遊びに行ったとき、自宅からすぐワインを持ってきてもらえるなど、利便性の高さを実感しました」
【実例】高層階に暮らす「クセ強住民」たち
限られた範囲での話かもしれませんが…と断りを入れ、営業マンは話を続ける。
「高層階に暮らす成功者の方は周囲を顧みず、わが道を行く方が多いようで、それについては同業者からも同じような話を聞いています」
「率直なお話、高層階に住んでいる方は、結構個性的というか、ワガママな方が多い印象です。ルーフ・バルコニーに勝手にジムのセットを設置してすさまじい騒音や振動を発生させ、下の部屋の方がブチ切れて大揉め…といったことも、実際にありました」
人気エリアのタワマンの最上階でも、1カ所だけ賃貸に出されているようなところは、オーナーがトラブルを起こして暮らせなくなり、やむなく…といったこともあるようだ。
このように最上階には、トラブルが多い方が住んでいる可能性があるらしい。
「高層階の〈クセ強住民〉とでもいいましょうか…」
では、今までとくに印象深かったのは、どのような住民なのだろうか?
「お客様から売却の依頼があり、物件を見に行ったのですが…」
該当の部屋を訪れると、室内全体が深紅で統一されており、そこかしこに巨大なリボンがあしらわれている。あたかもキャバクラの一室のようなインテリアだが、そこには40代の男性がひとり暮らしをしていた。
「物件を拝見し『これを売るのは難しいです、ごめんなさい』という話になって私の手を離れましたが、200平米くらいの広さだったので、まさにお店そのものといった感じでした」
「想像するに、おそらくお金持ちが遊びで作った、女性を呼ぶための部屋だったのでしょうね」
「フツーで穏やか」な暮らしを求めるなら、低層階も選択肢
普通の穏やかな暮らしを求めるなら、中層階以下の方いいと、上記の営業マンはいう。
「大成功してタワマンに住んでいるという方を、1ケタ台の階で見たことはありません。地上に近づくほど『草食系』というか、いわゆる普通の穏やかな人に近づいていく印象です」
「正直、タワマンには階層によるヒエラルキーがあるのです。中~高層階の住人が、そのようなプライドや見栄、コンプレックスでいさかいを繰り広げているのに対し、低層階の住民は我関せずで、のんびりしているわけです」
また、低層階にはほかの魅力があるという。
「10階ぐらいなら、地上の緑が意外と近く見えます。いわゆるタワマンらしい空間ではありませんが、穏やかな気持ちで暮らせるのではないですか」
低層階のメリットをまとめるなら、立地や設備がよく、万一の際も自室と外の行き来がラクで、一般的なマンションに近くて、窓からは緑がよく見えるところが多く、見栄の張り合いの圏外でのんびり暮らせる…といったところだろうか。
部屋選びの一助になれば幸いだ。
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