(※写真はイメージです/PIXTA)

明治時代後期(1890年~1900年代)、貨幣・金融制度が整備され、財閥が持株会社を設立し、資本主義化を進めていく日本。その一方で、数々の社会問題に対処すべく、政府が規制や弾圧を強めていたと、『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)著者で有名予備校講師の山中裕典氏はいいます。そんな社会問題が“てんこ盛り”だった当時の国内情勢について、詳しくみていきましょう。

労働運動の活性化を規制する「治安警察法」が制定

1880年代後半~90年代、産業革命が始まり労働者が増加するなかで、早くも繊維産業に従事する女工による労働争議が発生しました。労働者が団結してストライキを起こし、劣悪な労働条件の改善を資本家(経営者)へ要求したのです。

 

出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋
[図表4]労働者の実態を調査した文献一覧 出所:『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より抜粋

 

日清戦争後の1890年代後半、労働者は日常的な労働運動の組織化を図り、労働組合を結成して経営者の圧力に対抗しようとしました。アメリカで労働運動を学んだ高野房太郎が、片山潜とともに労働組合期成会(1897)を結成し、鉄工や鉄道関連などの男性労働者の労働組合を指導しました。

 

しかし、〔第2次山県内閣〕治安警察法(1900)を制定し、労働運動を規制しました。

 

近代最大の公害問題の発生

足尾銅山鉱毒事件とは、古河(古河市兵衛)が経営する栃木県足尾銅山が廃水を垂れ流し、鉱毒によって渡良瀬川の流域の農業に被害を与えた事件です。

 

衆議院議員の田中正造が議会で追及しましたが、外貨を獲得する輸出産業であった産銅業を守りたい政府は、鉱毒対策に及び腰でした。田中正造は議員を辞職し、天皇へ直訴しようとしましたが、果たせませんでした(1901)。その後も、田中正造は地域住民とともに、政府に抗議し続けました。

 

日本初の社会主義政党「日本社会党」が結成するも……

社会主義は、資本主義による格差拡大を否定し、貧困者救済・経済活動規制・土地や資本の公有などの手段で社会平等を達成しようとする考えです。しかし、膨大な私有財産を所有する資本家・地主は社会主義に反対し、資本家・地主に支えられる政府は、社会主義を危険なものとみなして規制しました。

 

日本では、最初の社会主義政党として社会民主党(1901)が安部磯雄・片山潜幸徳秋水・木下尚江らによって結成されました。しかし、治安警察法で即日禁止となりました。

 

日露戦争が近づくと、平民社(1903)が幸徳秋水・堺利彦らによって結成され、『平民新聞』を発行して日露戦争に反対しました。日露戦争ののち、最初の合法的な社会主義政党として日本社会党(1906)が結成され、〔第1次西園寺内閣〕が公認しました。しかし翌年禁止されました。

 

こうしたなか、大逆事件(1910)が発生しました。管野スガらの社会主義者による天皇暗殺計画を理由に、〔第2次桂内閣〕は全国の社会主義者を逮捕し、翌年幸徳秋水らを死刑としました(幸徳秋水は暗殺計画に関与せず)。

 

こののち、社会主義運動は低調となりました(「冬の時代」)。また、東京府の警視庁に政治犯・思想犯を取り締まる特別高等課特高)が設置されました。

 

政府による労働者の保護政策で「工場法」が制定

社会主義運動を徹底的に弾圧した〔第2次桂内閣〕ですが、1910年代になると、労働者を保護する社会政策も行い(労働者から徴発する日本軍兵士の弱体化を防ぐ意図があった)、労働者に対する事業主の義務を定めた工場法を制定しました(1911)。

 

しかし、労働者の保護は、1人あたりの労働時間短縮や賃金上昇などのコストアップにつながるため、輸出産業である繊維産業の業界からの反対が多く、施行は5年後の1916年となりました

 

 

山中 裕典

河合塾/東進ハイスクール・東進衛星予備校

講師

 

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※本連載は、山中裕典氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる日本史

大人の教養 面白いほどわかる日本史

山中 裕典

KADOKAWA

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