インフレ調整後、株価は低迷どころか「下落」する可能性も
前回、[図表1]を用いて、物価を考慮した実質株価がかなりの長期間にわたって低迷した事例を示しました。【赤くハイライトした部分】に注目すると、株価は(低迷どころか)インフレ調整後で下落する場合もあります。
もちろん、「下落のあとに株価が戻っていけば、積み立て投資の効果が出る」というのはそのとおりで、以前にもその旨を述べました。
しかし、個人投資家のみなさまのなかには、【上図】に示すような長期間を(物理的にも精神的にも)「待てない」という方もいらっしゃるでしょう。
今後、こうした状況が生じる可能性・リスクに備えるならば、株式よりもダウンサイドが相対的に少ない債券に投資をする投資信託への分散が一案です。
「予期せぬインフレ」を避けるには“年限が短め”の債券を
債券投資のリスクのひとつは「予期せぬインフレ」です。
債券が発行される際には「今後の予想インフレ率」をクーポン(表面利率)に上乗せして値付けされます。しかし、発行後の「実際のインフレ率」が、「発行時の予想インフレ率」を上回る事態が生じると、クーポン(表面利率)は満期まで固定されているため、投資家はインフレの差分だけ、購買力を失います。
前節の例でいえば、「株式に投資をしても、債券に投資をしても、程度の差こそあれ、物価調整後で下落する」事態に陥ります。
こうした「予期せぬインフレ」の悪影響をできるかぎり抑制する方法は「年限が比較的短い債券」に投資をすることです(→あるいは、そうした債券に投資をする投資信託を選択することです)。
すると、元金を比較的早く回収でき、その元金を再投資する新発債のクーポン(表面利率)は、新たな予想インフレ率が織り込まれる分、高くなるため、「予期せぬインフレ」に(少し遅れながらも)ついていくことができます。
ただし、年限が比較的短い債券は「予期せぬインフレ」への対処がしやすいかわりに、長い債券に比べ、利回りが低くなるのが通常です。
他方で、たとえ「予期せぬインフレ」が生じても、金融引き締めによってまもなく十分に(≒中央銀行のインフレ目標値付近にまで)インフレが抑制されていけば、年限が長い債券に投資をしていても悪影響は限定的と考えられます。
すなわち、中央銀行や、財政支出を行う政府への信頼次第で、短期の債券なのか、長期の債券なのかを選択できるかもしれません。付言すれば、公的債務が高水準の国は少なくありません。
以上を整理すれば、「年限が長めの債券に偏って投資をする投資信託」は避けてもよいかもしれません。