(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2023年11月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

7.リート

<現状>

●グローバルリート市場(米ドルベース)は、米長期金利が大幅に低下したことを受けて、大幅高となりました。S&Pグローバルリート指数のリターンは前月末比+10.4%でした。また、円ベースのリターンは、為替効果がマイナスに寄与し、同+7.7%となりました。

 

●米国は、長期金利が大幅に低下したことや、株式市場が上昇したことを受けて買い戻しが入り、大きく反発しました。欧州も、米国リートの上昇を好感して堅調な展開となりました。日本やアジア・オセアニアも、長期金利が低下したことを受けて、上昇しました。

 

<見通し>

●グローバルリート市場は、不動産市況の停滞や長期金利の高止まりから当面振れの大きい展開が見込まれますが、FRBの利上げ局面が終了したとみられるなか、長期金利が低下することに伴い、中期的には回復するとみています。

 

●米国は、当面振れの大きい展開が見込まれるものの、中期的には底堅い景気を背景に持ち直すとみています。欧州は、景気の停滞から当面上値の重い展開を想定します。日本やシンガポールは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。

 

グローバルリートの推移

8.まとめ

【債券】

●米国の長期金利は、FRBの利上げ局面が終了したとみられることから、緩やかに低下する展開を予想します。堅調な雇用による景気の底堅さからFRBの金融引き締めは当面続くとみられますが、先行きは景気減速とインフレの低下に伴う金融緩和が見込まれるためです。

 

●欧州の長期金利も、ECBの利上げ局面が終了したとみられるため、米長期金利に連れて先行きは緩やかに低下する展開を予想します。

 

●日本の長期金利は、日銀による金融緩和政策の修正が意識されるなか、金利水準をやや切り上げる展開を想定します。

 

【株式】

●S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は10-12月期が前年同期比+5.4%で、その後も改善傾向が予想されています。一方、TOPIX採用企業の10-12月期の純利益は同+8.5%で、その後は一進一退が予想されています。

 

●米国株式市場は、堅調な企業収益を背景に緩やかにレンジを切り上げると予想します。FRBの金融政策に対するタカ派(金融引締め)姿勢は緩和しましたが、データ次第で政策判断を行う方針を示していることから、経済指標や要人発言で振れやすい展開となりそうです。

 

●日本株式市場は、日本の名目GDP成長率の上昇や、製造業における景気循環の底打ちによる企業業績の改善を織り込む形で上値を試す展開が想定されます。24年度の賃上げ、税収の上振れ、財政政策に対する期待が株価上昇要因として注目されそうです。

 

【為替】

●円の対米ドルレートは、FRBの利上げ局面が終了したとみられるものの、引き続き日米の金利差から下落圧力を受けるため、当面もみ合う展開を予想します。先行きは米国の景気とインフレが減速することに伴い、FRBによる利下げが意識され、円が小幅に上昇すると想定しています。

 

●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きの欧州金利の低下による金利差縮小により小幅に上昇するとみています。

 

●円の対豪ドルレートも、当面もみ合うものの、中国経済の減速や豪州中銀の利上げ打ち止めにより小幅に上昇する展開を予想しています。

 

【リート】

●グローバルリート市場は、不動産市況の停滞や長期金利の高止まりから当面振れの大きい展開が見込まれますが、FRBの利上げ局面が終了したとみられるなか、長期金利が低下することに伴い、中期的には回復するとみています。

 

●米国は、当面振れの大きい展開が見込まれるものの、中期的には底堅い景気を背景に持ち直すとみています。欧州は、景気の停滞から当面上値の重い展開を想定します。日本やシンガポールは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。

 

 

(2023年12月4日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本株式市場は「大幅上昇」、今後注目される「株価上昇要因」は?~23年11月のマーケットを振り返る【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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