5.企業業績と株式
<現状>
●S&P500種指数の11月の予想1株当たり利益(EPS)は244.0で、3ヵ月連続で過去最高水準を更新しました。前年同月比は+5.4%、前月比は+0.7%でした。TOPIXの予想EPSは171.7、前年同月比は同+9.0%、前月比は+1.6%と増益基調が続いています。
●米国株式市場は大幅高となりました。FRBが月初のFOMCで2会合連続の政策金利据え置きを決めたことに加え、10月の雇用統計や消費者物価指数が市場予想を下回ったことで、利上げ局面の終了観測が強まり、長期金利が急低下したことが追い風となりました。
●日本株式市場も米国株式市場の上昇に加え、日本企業の決算が好調なことや、ハイテク株などに買い戻しが入ったことなどから大幅に上昇しました。
<見通し>
●S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は10-12月期が前年同期比+5.4%で、その後も改善傾向が予想されています。一方、TOPIX採用企業の10-12月期の純利益は同+8.5%で、その後は一進一退が予想されています。
●米国株式市場は、堅調な企業収益を背景に緩やかにレンジを切り上げると予想します。FRBの金融政策に対するタカ派(金融引締め)姿勢は緩和しましたが、データ次第で政策判断を行う方針を示していることから、経済指標や要人発言で振れやすい展開となりそうです。
●日本株式市場は、日本の名目GDP成長率の上昇や、製造業における景気循環の底打ちによる企業業績の改善を織り込む形で上値を試す展開が想定されます。24年度の賃上げ、税収の上振れ、財政政策に対する期待が株価上昇要因として注目されそうです。
6.為替
<現状>
●円の対米ドルレートは、FRBによる利上げ局面が終了したとの見方が強まり、米長期金利が大幅に低下したことを背景に反発しました。日米金利差の縮小から月末にかけて円買い・ドル売りが入り、147円台に上昇しました。
●円の対ユーロレートは下落し、約15年ぶりの安値水準となる161円台で終了しました。ユーロは、金利先安観の強まった米ドルに対して上昇しました。
●円の対豪ドルレートは、下落しました。豪ドルは、金利先安観の強まった対米ドルに対して上昇しました。
<見通し>
●円の対米ドルレートは、FRBの利上げ局面が終了したとみられるものの、引き続き日米の金利差から下落圧力を受けるため、当面もみ合う展開を予想します。先行きは米国の景気とインフレが減速することに伴い、FRBによる利下げが意識され、円が小幅に上昇すると想定しています。
●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きの欧州金利の低下による金利差縮小により小幅に上昇するとみています。
●円の対豪ドルレートも、当面もみ合うものの、中国経済の減速や豪州中銀の利上げ打ち止めにより小幅に上昇する展開を予想しています。