前回は、「住宅の工法」から耐震性能を判断する方法について説明しました。今回は、住宅構造における「耐震」「免震」「制震」の違いについて見ていきます。

耐震性を実現するための構造は主に3種類

ポイント④「制震だから」といって地震に強いわけではない

 

最近、建売住宅でよく見かけるようになってきたのが「制震構造」です。

 

後ほど説明しますが、建築基準法に定められている耐震性を実現するために、これまでさまざまな構造が生み出されてきました。現在、主流になっている構造は3種類あります。

 

「耐震」「免震」「制震」です。簡単に説明すると、耐震は建物自体の強さ、免震は揺れを建物に直接伝えないこと、そして制震は揺れが建物に伝わっても抑制したりすることです。いずれも、揺れに対してそれぞれ違ったアプローチで家を守ろうとする目的は同じです。

 

【耐震構造】

現在、日本においては主流となっている構造。建物の構造部分である壁や柱、梁を強くすることによって、建物を頑丈な造りにして、地震による影響に耐えるような設計が行われています。

 

長所:地震による崩壊・倒壊を防ぐために、各所が強く補強されているため、建物自体の倒壊を防ぐことができる。

 

短所:大きな振動の際は、家具や電化製品の転倒などの被害が生じる。

 

【制震構造】

建物の構造部分に、地震エネルギーを吸収させる制御装置(ダンパー)を組み入れています。揺れが吸収されることによって、建物の揺れが軽減されます。長所:家具の転倒などの室内の被害が減る。

 

【免震構造】

建物が建っている基礎の部分と建物との間に、地震エネルギーを吸収させる積層ゴムなどの特殊な装置を取り付けます。地震による揺れが、建物に直に伝わらない構造になっています。

 

長所:地盤からの揺れを直接的には受けないため、建物の損傷が少ない。室内の家具転倒や窓ガラスの破損が少ない。

 

【図表】耐震・制震・免震の違い

 

「制震構造」では大きな地震に耐えられない!?

注意したいのは、制震というのは一度建物に伝わった揺れを抑制するものである、ということです。つまり、建物そのものが強くなければ、つまり、耐震性が強くなければ、いくら「制震」構造になっていたとしても、大きな地震が起これば耐えられないということです。

 

最近内覧した物件は、「制震」構造であることを非常に大きく謳っていましたが、耐震診断をした結果、耐震基準ギリギリクリアの数値でした。

 

「免震」はビルなど、大きな建造物に使われる技術で、一般住宅のような建物にはまだあまり見られませんが、「制震」は新築戸建てでもよく目にします。制震構造だからといって安全だと思い込むのは間違いです。言葉のイメージに惑わされないように注意が必要です。

本連載は、2015年6月25日刊行の書籍『こんな建売住宅は買うな』から抜粋したものです。その後の法律・条例改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

こんな建売住宅は買うな

こんな建売住宅は買うな

田中 勲

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅と比べて安く購入できる建売住宅は、特に地価の高い都心近郊で人気がありますが、実は流通している住宅の大部分が目に見えない欠陥・不具合を抱えているのが実情です。 実際に、断熱材のズレ・不足や、準防火地域にお…

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