前回は、新築を建築する前の「地盤調査」が重要な理由について説明しました。今回は、「木造住宅耐震診断士」による耐震診断のポイントについて解説します。

均等な荷重が望ましい「柱の設計」

ポイント⑭ 複雑な凹凸のある建物は避ける

 

建物の平面がどのような形をしているかによって、揺れへの耐力は大きく変わります。デザイン的に魅力的だったとしても、複雑な凹凸のある建物の場合には、建物本体と突出している箇所の耐性に差が生じます。

 

この差によって、地震が起きた際に、それぞれの箇所がバラバラに動くことによって、構造が壊れやすくなってしまいます。

 

建物の平面としては、なるべく単純な組み合わせになっているほうが耐力があります。また、2階建てや3階建ての建物の場合には、上の階のほうが揺れを大きく受けます。重い家具や本棚、ピアノなどを2階に置くと、地震の際に1階にかかる負荷が大きくなります。2階の床に載せる荷重を軽くするように工夫することも大事です。

 

さらに、上の階に対する1階の耐力を考えると、ビルトインガレージを配置したり、大きな空間のある間取りにすると、柱や耐力壁の量が少なくなってしまい、耐震性が低下します。

 

柱に関しても、建物の外周や内部の重要な箇所において、均等に荷重がかかるような設計になっていることが望ましいのです。2階以上の建物の隅柱や要となる柱については、1階との通し柱とするか、接合部を耐震金物で補強するようにして、耐力を上げたほうがより安全です。

「耐震基準を満たしているか」を数値ではっきりと判断

ポイント⑮ プロが行う木造住宅の耐震診断を利用する手も

 

木造住宅耐震診断士とは、木造在来工法の住宅が、震度6強~7クラスの地震が起きた際に、倒壊または崩壊しない建物かどうかを診断する専門家です。

 

建物診断を行う中で、当然ながら、地震の影響を心配される人が多いのが気になっていました。そこで、数値ではっきりと耐震基準を満たしているか否かを回答できるようにしたいと考えたのです。

 

そのひとつの方法として、木造住宅耐震診断士の資格を取得しました。これによって、耐震診断をさらに確実にできるようになりました。

 

詳細な設計図面を取り寄せなくてはいけないので、診断を行えるのは、新築一戸建てに限られてしまうのですが、そこから次のような点をチェックします。

 

◦柱や梁の結合部に、規定の耐震金物が使われているか

 

◦壁の構造と種類

 

◦壁のバランスがとれているか

 

◦壁の中には、必要なだけの筋交が入っているか

 

◦構造用合板の強度は基準を満たしているか

 

日本耐震防災事業団の耐震診断書をベースに、エクセルで制作した自動計算で保有耐力を計算するオリジナル耐震診断書を作成していきます。

 

これによって、今までのように「建築基準法通りに造られているから大丈夫」ではなく、具体的な回答ができるようになりました。

 

【耐震診断の評点】

耐震診断の結果のことを評点といいます。保有耐力を、その建物に必要な耐力で割ると、耐震診断の評点を算出できます。

 

【図表 耐震診断の評点(保有耐力)の見方について】

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    本連載は、2015年6月25日刊行の書籍『こんな建売住宅は買うな』から抜粋したものです。その後の法律・条例改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    田中 勲

    幻冬舎メディアコンサルティング

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