前回は、地震に対する耐震性を左右する「耐力壁」について説明しました。今回は、入居前の入念な耐震診断が必要な「ビルトインガレージ」について見ていきます。

「壁の強さとその配置」が重要となる耐震診断

ポイント⑩ ビルトインガレージの住宅は詳しい診断が必須

 

ここまで、耐震基準について解説してきましたが、これらは木造住宅3階建て以上の場合です。3階建ては、建築確認の申請時に構造計算の書類提出が必要とされているため、確認ができるというわけです。

 

では、木造3階建てで、構造計算がきちんと行われていれば、耐震性に問題はないのかというと、そうではありません。

 

耐震診断は、「壁の強さ」と「壁のバランスと偏心率」を数値化することによって診断します。つまり、壁の強さとその配置(壁のバランス)が重要だということです。では、1階に壁がない住宅の場合は、どうでしょうか。

基準を「ギリギリでクリア」している物件ばかり!?

最近、特に都心では、1階部分にガレージを入れ込んだデザイナーズハウスや狭小住宅をよく目にします。いわゆる「ビルトインガレージ」です。狭い立地ながら、工夫して床面積を確保したり、独特のデザインがなされた住宅として、人気を博しています。

 

しかし、このビルトインガレージの場合、道路から車を出し入れするために、道路に接している側には壁がありません。結果的に、建物の一部が空洞になるようなものですから、耐震強度を計算すると、「ギリギリでクリア」しているという物件がかなりあります。

 

新築の段階で、ギリギリでクリアしているということは、年数が経つことによって生じる劣化が起きた場合、基準値を下回るリスクが高くなります。

 

耐震診断では、劣化係数という数値も存在しています。新築の場合には、劣化係数は計算に含みません。しかし、この建物を、数年後に劣化係数を考慮した耐震診断をすると、確実に基準を下回るはずです。

 

都心や神奈川県で狭小住宅の購入を検討している方であれば、必ず入居前の耐震診断の数値を理解したうえで決断してください。

本連載は、2015年6月25日刊行の書籍『こんな建売住宅は買うな』から抜粋したものです。その後の法律・条例改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

こんな建売住宅は買うな

こんな建売住宅は買うな

田中 勲

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅と比べて安く購入できる建売住宅は、特に地価の高い都心近郊で人気がありますが、実は流通している住宅の大部分が目に見えない欠陥・不具合を抱えているのが実情です。 実際に、断熱材のズレ・不足や、準防火地域にお…

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