若手社員「失敗が怖い…」 上司「大丈夫だ!頑張れ!」←この激励が〈実は逆効果〉なワケ…上司が知らない“驚愕の心理”【若手育成のプロが解説】

若手社員「失敗が怖い…」 上司「大丈夫だ!頑張れ!」←この激励が〈実は逆効果〉なワケ…上司が知らない“驚愕の心理”【若手育成のプロが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

最近の若手社員に向かって、周囲に聞こえるような声量で「頑張れ!」「大丈夫!」などと声をかけてはいませんか? 実はこれ、若手部下への「やってはいけない」NG行動の一つです。若手社員育成専門コンサルタント・伊藤誠一郎氏の著書『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです』(日本実業出版社)より一部抜粋し、解説します。

若手社員の約9割が「失敗への恐怖」を抱えている

最近の若手社員は、とかく失敗することを怖がります。

 

若手社員の研修で「仕事に対してどんなことを考えていますか?」という質問をしてみると、じつに9割くらいの人が「失敗するのが怖い」と答えます。

 

仕事に対して将来に向けての目標や充実感といった前向きな言葉は聞かれず、若手から「失敗」「怖い」というネガティブなワードがまず出てくることに驚かされます。

 

もちろん何か新しいことに挑戦するときは、誰しもできれば失敗したくないと考えるのは自然なことです。しかし、さきほどの「仕事」という漠然とした質問に対して、若手が「失敗することの恐怖」を挙げるのは、いかにその気持ちが根強いかを物語っています。

 

そんな若手社員の姿勢に、上司や先輩であれば「失敗なんか怖がるな!」「大丈夫だ! 頑張れ!」と熱い言葉で鼓舞したくなるでしょう。

 

しかし、このアプローチは最近の若手社員には適切とは言えません。私も以前は、そのように鼓舞していましたが、彼らのメンタルにマッチしていない、いやむしろ逆効果になっていることさえ感じるようになりました。

若手に「熱さの押し売り」は厳禁

まず最近の若手は、熱血、熱さが苦手です。最近の若手は、自分が熱くならないだけでなく、外部からの熱意をどう受けとめていいかがわかりません。

 

それだけならまだしも、中には熱く迫られることをどこか気恥ずかしい、鬱陶しい、できればやめてほしいとまで感じています。

 

ですから、上司や先輩は若手を鼓舞したい気持ちを、いったん立ち止まってクールダウンすることが必要です。自分が熱ければ部下にも必ず伝わるはずだという思いは捨てて、冷静になってください。

 

そうすることで、まず若手に最初のアプローチで拒絶されることが回避できるだけでなく、上司や先輩が「どうしてわかってくれないんだ」「なんでこっちの気持ちが伝わらないんだ」というストレスを抱えることもなくなります。くれぐれも「熱さがない=やる気がない」という固定観念で決めつけないように注意してください。

若手が抱える「周囲に迷惑をかけたくない」という強い心理

また、若手は自分が鼓舞されていることを周囲に気づかれてしまうのも歓迎しません。これは、彼らが極度に失敗を恐れている原因に関連しています。

 

若手に「なぜ失敗を恐れるのですか?」と尋ねると、「周囲に迷惑をかけたくないから」という答えが返ってきます。

 

従来の感覚では、失敗によって自分の醜態をさらすことや弱点を周囲の人に知られることが恥ずかしいとなりますが、最近の若手社員は自らの恥ずかしさ以上に「みんなの足を引っ張りたくない」という思いを強く持っています。

 

たとえば、若手社員を対象とした研修では、質問がほとんど出ない傾向が年々強くなっています。「どんな些細なことでもいいから遠慮なく質問していいですよ」と優しく働きかけてもまったく反応がありません。

 

しかし、若手社員は休憩時間に入るとパラパラと個別に質問をしにきます。「さっき質問してくれたら良かったのに」と言うと、彼らは「自分なんかのためにみんなの時間を使うのは申し訳ない」と言います。

若手を勇気づけたいときは「こっそりと」「具体的な言葉で」

上司や先輩は、若手社員の繊細さを理解することが大切です。

 

そして、彼らを勇気づけたいと思ったときには、周囲に聞こえないように、こっそりと言葉をかけてあげるようにしてください。そうすれば、彼らはあなたの存在を心強く感じるでしょう。

 

その際に「頑張れ!」「大丈夫だ!」という大雑把な言葉で終わらせないように。具体性がないと、若手は「頑張れって、何をどう頑張ればいいの?」「大丈夫ってどうして?」とむしろ新たな疑問を持ったり、自分はテキトーに扱われているという感覚を持ったりします。

 

したがって、「いつまでに、何を、どのように頑張ればいいのか」といった取り組み方まで明らかにしましょう。また、途中でわからなくなったり、困ったりしたときには、「誰にどうサポートを求めればいいのか」を伝えておくことで、「大丈夫だ!」の意味が理解できるようになります。

 

若手社員はただでさえ遠慮して質問できないのですから、困ったときの道筋も明らかにしておくことが重要です。

 

若手が頑張った結果もしっかりほめてあげてください。若手を勇気づけることは熱心にするものの事後のケアが手薄になる上司や先輩は多いです。

 

その際も、良い結果だからといって「よく頑張った!」「いいぞ!」と周囲に聞こえるような大きな声を上げてはいけません。やはり評価や賞賛も個別に伝えます。そのほうが、若手社員は素直に喜んでくれます。

 

若手も具体的に何が良い結果につながったのかをしっかり振り返ることで、次への自信になります。

 

こうした上司と若手の部下との具体的なコミュニケーションを日常から積み重ねておくことで、良好な関係性は構築できます。その結果、若手社員自身が、この人になら、この組織なら安心して仕事に挑戦できると感じるようになってくれば、上司の思いもより伝わるようになります。

 

イラスト:山本啓太 伊藤誠一郎著『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです』(日本実業出版社)より
【図表】若手を熱い言葉で鼓舞するのは逆効果 イラスト:山本啓太
伊藤誠一郎著『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです』(日本実業出版社)より

 

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<ポイント>

こっそりと周囲に聞こえないように、具体的な言葉を用いて若手を勇気づける

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伊藤 誠一郎

若手社員育成専門コンサルタント

若手社員育成研究所代表

 

1971年東京都出身。学習院大学法学部法学科卒業後、15年間にわたり医療情報システム、医療コンサルティング分野において提案営業、プロジェクトマネジメントの業務に従事した後、2009年に独立し、プレゼンテーション、提案力向上をテーマに講師活動を開始。その後、ロジカルシンキング、職場コミュニケーション、組織マネジメントなどテーマを広げ、新入社員から中堅社員、管理職まで延べ300社、2万人以上に研修、講演、セミナーを実施。

現在は、多くの若者と接する氷河期世代という二刀流講師としてZ世代と言われる若手社員育成と彼らを育てる上司、先輩のための企業研修、講演を行っている。

 

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※本連載は、伊藤誠一郎氏の著書『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです

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伊藤 誠一郎

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