「わかりきった質問」をするのは、単なる子ども扱いでしかない
若手社員が失敗してしまったとき、説明して教えるなかで注意しなければならない点があります。それは、とくに経験豊富な上司からすると「そんな基本的なこともわからないのか?」「そんなの当たり前だろう」と思うような基本的なミスが起きた場合についやってしまいがちなことです。
たとえば、次のような言い方がそうです。
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上司:「君の話はわかりづらいんだよね。話がわかりづらい営業とわかりやすい営業のどっちが喜ばれると思う?」(※わかりきった質問)
部下:「わかりやすい営業です…」
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これは男性の上司に多い言い方です。女性の上司の場合は次のような言い方もあります。
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上司:「何でできなかったの?」「どうして忘れちゃったの?」「何で?」
部下:「…すみません、つい忘れてしまいました」
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といったように「何で?」「どうして?」と理由を問い詰めるパターンです。
上司としては、しっかり教えるために問題点や原因を1つひとつ丁寧に確認しているだけかもしれません。しかし、このような詰問型の指摘の仕方は、若手社員にとっては、自分でも悪いと感じていることを執拗に攻められ、人間性を否定されていると受けとることもあります。
わかりきったクイズを出したり、答えようのない質問を連続的に投げかけたり、詰問したりすることは、単なる子ども扱いでしかありません。ただでさえ承認欲求が強い最近の若手社員の「周囲に役立てるように頑張りたい」という素直で真面目な思いを踏みにじることになります。
しかも、こうした言い回しはおだやかな口調で話すと、上司としてはパワハラにはならないだろうと思いがちです。
しかし、わかりきった質問や詰問は、若手社員の心をじわじわと傷つけてしまい、厳しく怒られる以上に大きなダメージを負わせてしまいます。
その背景には、暗に上司である自分が上、若手社員が下と位置づけているような意識があり、若手社員もそのように感じているはずです。
ストレートに伝えたほうが、わかりやすいことも多い
若手社員の失敗や基本的なミスに対して、再発防止を図るべく指摘する際には、ストレートに説明します。
『さっきのお客様への説明の仕方だけど、ちょっとわかりづらかったかもしれないですね。お客様もそういう表情をしていたことに気づきましたか? お客様は商品やサービスの内容だけじゃなくて、営業のわかりやすい説明からも安心感や信頼感を持つものだから、伝え方もしっかり意識することは大切です。』
そして、次のように続けます。
『具体的なポイントは2つあって、1つ目は、最初にこれから何の話をどういう順序でするのか全体像を伝えることです。2つ目は、重要なポイント、つまり、結論を最初に伝えること、じゃあ次のお客様からこの2つを意識してやってみましょう!』
いかがでしょうか。わかりきった質問などしなくても、伝えるべきゴールはまったく変わりません。
むしろ会話が行ったり来たりしないぶん、伝えるべきポイントが明確になります。それだけでなく時間が短くなって効率的ですし、何より若手社員の素直な心を傷つけることがありません。
若手自身も自分の成長につながる話だとわかると、信頼感を持つ傾向が強いですから、良い関係性を築くことにもつながります。
誰しも最初は、わからないものはわからないですし、できないことはできません。自分で考えられるのも、基本的な知識やスキルをひと通り身につけてこそです。
そのことを理解せずに、最初からさも理解していないのが悪いとするから、わかりきった質問や詰問をするのです。
それこそ、「わかりきったことを何度も言わせようとする上司、物事をストレートに伝える上司、若手社員はどっちを望んでいるかわかりますか?」という、わかりきった質問を自分自身に投げかけてみてください。
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<ポイント>
若手社員の心を傷つけないために、知識やスキルはストレートに教える
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伊藤 誠一郎
若手社員育成専門コンサルタント
若手社員育成研究所代表
1971年東京都出身。学習院大学法学部法学科卒業後、15年間にわたり医療情報システム、医療コンサルティング分野において提案営業、プロジェクトマネジメントの業務に従事した後、2009年に独立し、プレゼンテーション、提案力向上をテーマに講師活動を開始。その後、ロジカルシンキング、職場コミュニケーション、組織マネジメントなどテーマを広げ、新入社員から中堅社員、管理職まで延べ300社、2万人以上に研修、講演、セミナーを実施。
現在は、多くの若者と接する氷河期世代という二刀流講師としてZ世代と言われる若手社員育成と彼らを育てる上司、先輩のための企業研修、講演を行っている。
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