若手社員に不満を持ったままでは、彼らとの距離は縮まらない
「最近の若手は言われるまで何もしない」
「最近の若手は言われたことしかやらない」
日々の仕事のなかで、若手社員に対して、このような不満を持つことはありませんでしょうか。
これらは、企業の管理職の方々に「最近の若手社員をどのように感じていますか?」と、答えの範囲が広めの質問をしたときに最も多く聞かれる声です。
中には「言われたことしかやらない指示待ち人間」「自分からはまったく動かない」と、よりはっきりした言い方をする人もいます。若手社員の立ち振る舞いに大きな不満を抱えている上司や先輩が多いことがわかります。
しかし、最近の若手は「自ら動かない」などとネガティブな感情を抱いているかぎり、彼らとの距離が縮まるはずがありません。一刻も早くこの状態を解消して若手社員と良好な関係性を築くためにも、彼らの真の姿を理解する必要があります。
若手社員は「動かない」のではありません。「動けない」のです。この視点に立つと、だいぶ受けとめ方が変わってくるはずです。
「自分から考えたり、動いたりする経験をしてこなかった」世代
若手社員が「動けない」ことには、明確な理由があります。彼らが生まれた2000年前後からインターネットが急速に発達し、2010年以降はスマホが一気に普及しました。今や生活するうえでの情報の多くはスマホを使って検索します。
電車やバスの中でも今日のニュースをチェックしたり、仕事や趣味に関する調べ物をしたり、他人の日常をSNSで確認したりするなど、それらすべてでスマホを使って行います。そこには膨大な情報があり、検索すると答えが見つかるのです。
上司世代は大学生や社会人になるまでネットもスマホもないアナログ時代を経験してきた人も多いですが、最近の若手社員は異なる環境で育ってきたのです。
彼らは、相手の都合に気を揉みながら家の固定電話から連絡をしたり、時刻表や地図を手に旅行の行程を調べたり、1つの言葉の意味を調べるのに辞書を行ったり来たりした経験をせずに育ったのです。
こうした背景を踏まえると、単純に今の若手を「自分から動かない」と批判できるでしょうか。
自ら動く必要性から教えれば、若手は素直さを持って耳を傾ける
まず、最近の若手社員は「自分から動けない」のだと受け止めること。
「自分から考えたり、動いたりする経験をしてこなかった」と思いを及ぼすと、若い世代が少々気の毒に思えてきます。そして、寄り添ってあげたい気持ちが湧き上がってきます。
スマホの情報も有益で便利ではありますが、それだけに頼らずに自分の頭で考えること、自分の意志で動くことの必要性と大切さを教えようという意識も芽生えてきます。
こちらが支援する気持ちで歩み寄ると、素直さを持って耳を傾けてくるというのも今の若手社員の特徴です。
したがって、上司は「与えられた情報だけでは仕事で一人前になれないこと」「自分で周囲の状況や相手の感情を読み取って、言われなくとも行動する必要があること」それ自体から教えてあげるのです。
もし、若手に「それ(言われなくとも行動する必要があるとき)って具体的にどんなときですか?」と質問されたら、仕事で起こり得ることを1つひとつ教えてあげるのです。
そのうえで、若手の成長のタイミングを見て「自分から動く」という本来の意味が理解できたかどうかを確認していきます。そうすれば、指示出し上司と指示待ち部下の関係には陥りません。
時に、「そんなことまで教えないといけないのか」と上司や先輩は思うかもしれません。しかし、「最近の若手は自ら動かない」と不満を抱えたまま時間をすごすより、「そんなこと」から教えてしまったほうが早いのです。
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<ポイント>
ネット検索で育った世代には、「自分から動く必要性」そのものから教える
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伊藤 誠一郎
若手社員育成専門コンサルタント
若手社員育成研究所代表
1971年東京都出身。学習院大学法学部法学科卒業後、15年間にわたり医療情報システム、医療コンサルティング分野において提案営業、プロジェクトマネジメントの業務に従事した後、2009年に独立し、プレゼンテーション、提案力向上をテーマに講師活動を開始。その後、ロジカルシンキング、職場コミュニケーション、組織マネジメントなどテーマを広げ、新入社員から中堅社員、管理職まで延べ300社、2万人以上に研修、講演、セミナーを実施。
現在は、多くの若者と接する氷河期世代という二刀流講師としてZ世代と言われる若手社員育成と彼らを育てる上司、先輩のための企業研修、講演を行っている。
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