※画像はイメージです/PIXTA

今世紀に入り、中国は公正な貿易ルールを逸脱して経済成長している、という意見を聞くことが少なくありません。特に、知的財産権の侵害については「パクリ大国」などと揶揄され多くの批判を浴びています。香港の金融調査会社ギャブカルのリサーチヘッドであり、米国の米中関係委員会(NCUSCR)のメンバーでもあるアーサー・R・クローバー氏は、そうした「ズル」は先進国も、かつて同様のことを行ってきており、あるいはいまも行っていることを示したうえで、それでも許容することが難しい中国の問題を指摘します。本記事では、同氏による著書『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)から、特に知的財産権侵害の問題点を掘り下げ、解説します。

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中国は「ズル」をするのか

「中国は公正な貿易や競争のルールに対して『ズル』をすることによって、産業と輸出で成功した」という批判がよくなされる。こうした批判は中国の輸出が拡大した2000年代初期に始まった。

 

そして、中国製造2025の採用以来、また2016年に11月にドナルド・トランプが米国大統領に選ばれて以来、批判の声はさらに大きくなった。特に、中国は以下の方法で自国の産業と輸出を援助していると言われる。

 

・金利と為替レート、エネルギー価格を不自然に低く据え置く。
・国有企業に補助金を大量に注ぎ込む。
・中国市場に売り込みをかけたい外国企業に対して、不合理な規制を課す。
・外国企業の知的財産権を盗むことを認める。あるいは、外国企業が中国市場にアクセスする条件として、知的財産権の移転を強制する。

 

こうした非難は常に、経済的事実と政治的な作り話が入り混じったものだ。

 

実は他の先進国も貿易慣行で「ズル」をし、しかも外国企業も「ズル」をしている中国経済で儲けてきた

「公正」ではないかもしれない貿易慣行は、実はかなり一般的だ。「キャッチアップ」に成功して工業経済をつくりあげた国は、どれも前述の手法を一部、あるいはすべて使っていた。

 

米国も例外ではない。19世紀の大半において他者の知的財産権を無視し、また、第二次世界大戦直前まで高い関税障壁を設け、さらには、政治的に重要な産業には大規模な助成をし続けていた

※ 米国の補助金に関しては、Lardy, Markets over Mao: 35-36 を参照

 

すべての国が、世界貿易や投資のルールを自国に有利なようにねじ曲げようとし、自国の市場支配力で実現できる程度には、それに成功している。

 

大ざっぱに言うと、中国の産業面での成功は、同国がもともと持っている優位性をうまく活用したことと、マクロ経済政策および産業政策が巧みなものだったことが要因であり、「ズル」によるものではない。

 

外国企業も中国の成功に重要、かつ熱心な貢献をし、進んで大規模な投資や技術移転を行ってきた。それは、中国の巨大な市場と効率的な生産基盤にアクセスするためであった。中国企業との競争で傷付いた企業もあったが、全体として見ると、外国の企業は中国からかなりの利益を上げてきた。

 

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