※画像はイメージです/PIXTA

1979年に「改革開放」政策が始まり、それ以降しばらく、民間の力を引き出す一方、国有企業は民営化していく方針の下、政策が実施されてきました(「国退民進」)。しかしこのところ、アリババやテンセントのようなIT企業への締め付けが強まるなど、そのような民間活力を引き出す政策に変化があり、「国進民退」となったようです。そこで本記事では、香港の金融調査会社ギャブカルのリサーチヘッドであり、米国の米中関係委員会(NCUSCR)のメンバーでもあるアーサー・R・クローバー氏による著書『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)から、中国の企業をめぐる政策の変遷について解説します。

中国における「民間企業」と「国有企業」はどのような存在か?

現在、中国には急速に成長している大きな民間セクターがあり、経済産出量と雇用の面では半分以上を占め、さまざまな経済指標で民間企業が占める割合も上昇している。

 

しかし、民間企業は一般的に小規模だ。中国の大企業は圧倒的に国有が多く、資本集約的な産業のほとんどを国有企業が支配している。

 

国の資産の中で国有企業が占める割合は、他のどの大国と比べても中国の方がはるかに大きい。国有企業はその産出量に比して、はるかに多くの経営資源(金融資本、土地、エネルギー)を使っている。また、国有企業は政治権力構造においても不可欠な部分になっている。マクロ経済政策や業界規制の手段として、相対的に弱い政策や規制手段の代わりに利用されるのだ。

 

したがって、国有企業の力と重要性は、経済統計に表れる数字よりもはるかに大きいと言える。

進む「国進民退」

少なくとも2013年以来(おそらくは2008年、あるいはそれ以前から)、経済政策の目標が、国有企業の役割を強化することとなっている。

 

民間企業が不利な条件で国有企業に自社売却を強いられた有名な例も複数存在し、さらには、山西省の石炭産業が省の国有企業の下に統合され、民間所有の炭鉱が買い上げられたという例もあった。

 

民間企業が国有企業に置き換わるスピードは、2008年以降明らかに低下した。国有企業数は減少が止まって安定し、2010年を過ぎると再び増え始めた。

 

国有企業の雇用者数も安定した。そして、固定資産投資額において国有企業が占める割合も、以前ほど急速に減少することはなく、いくつかの業界では上昇し始めた

 

加えて、習近平が権力の座についてから、特に2015年以降は政府の政策における国有企業優遇の傾向が明らかになり、さまざまな指標で国営セクターの占める比率が安定した。中央政府は、民間企業にこれまで以上に影響力を及ぼす手法を導入するようになった。たとえば、企業内での共産党委員会の設置を、以前よりも厳格に求めるなどである。

 

そして、国有企業は依然として、その経済成長への貢献度合いに比較するとかなり多くの経営資源(土地、資本、エネルギー)を使い続けた。一方で、民間企業の借り入れは、ノンバンクによる融資を制限する取り組みによって規制されるようになった。

 

2019年の時点では、経済における国有企業の役割は、いくつかの側面においては拡大しつつあったと言って間違いない。

 

「国進民退」の状況については、スコット・ケネディによる以下の文献で詳しく論じられている。Scott Kennedy, “Private Firms: Pink Capitalists In Bloom,” China Economic Quarterly (June 2012): 37-42︱“Wanted: More Creative Destruction,” Gavekal Dragonomics research note, February 10, 2014.

 

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チャイナ・エコノミー 第2版

チャイナ・エコノミー 第2版

アーサー・R・クローバー

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