※画像はイメージです/PIXTA

中国の1979年に始まった「改革開放」政策によって多くの人々が貧困を抜け出したものの、一方で所得格差が拡大し、その格差が世界で最も大きい社会の1つともいわれています。本稿では、香港の金融調査会社ギャブカルのリサーチヘッドであり、米国の米中関係委員会(NCUSCR)のメンバーでもあるアーサー・R・クローバー氏による著書『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)から、中国と他国の所得格差を比較しながら、紐解いていきます。

中国の所得格差はどの程度ひどいのか

中国自身も、世界銀行などの国際機関もよく言及するように、1980年代以降の経済成長により、中国では何億人もが貧困から抜け出した。これは素晴らしい成果である。

 

しかし、経済成長の成果は非常に不平等に配分された。今では、所得や資産に関するどんな指標を取ってみても、中国は地球上で最も格差の大きな社会の1つとなっている。

 

そしてもっと重要な点は、中国は過去数十年において最も急速に格差が広がった国であるということだ。

 

所得の格差を測る標準的な指標に、ジニ係数がある。0が完全な平等を表し、1はすべての所得を1人の人間がコントロールしていることを示す。多くの国のジニ係数は0.2から0.6の間にある。

 

社会福祉システムが高度に発達した富裕国(北欧諸国など)は数値が低く、一方で、農業や鉱業の生産物を主体とした経済で、富が一部に集中しがちな国(アフリカや中南米など)では、高い数値になる傾向がある。中所得から高所得の民主主義国が集まっている経済協力開発機構〈OECD〉加盟国では、ジニ係数の中間値は0.31である。

 

ジニ係数からわかる中国の所得格差の特徴

中国のジニ係数の推計値はさまざまだが、どれも2つの点については分析が一致している。1つは、中国の所得格差は非常に大きいということ。もう1つは、少なくとも2008年までは、その格差が大きく拡大したということだ。

 

中国の所得格差は、主要な開発途上国のいくつかよりは小さいが、すべての先進国との比較ではかなり大きい。さらには、中国が真似をしてきた東アジアの近隣諸国・地域(日本、韓国、台湾)よりも格差が大きいということも重要な点だ。

 

加えて、1980年の時点では所得格差は小さかったが、改革開放期の少なくとも最初の30年で急速に拡大した。

 

これを踏まえて、格差についてもう少し詳しく見てみよう。

 

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チャイナ・エコノミー 第2版

チャイナ・エコノミー 第2版

アーサー・R・クローバー

白桃書房

超大国の本質を多様な切り口で解説! 翻訳でも読みやすい! 僅か40年で日本の2.5倍、米国の三分の二の経済規模にまでなり近年では米国そして国際秩序と対立することもはばからなくなった中国。 先進国の体制とは大きく異…

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