株価にはたいてい「熱狂」が上乗せされている
「タイプC」の「株式市場全体では上がりにくく、生き残る企業や産業の選別が進むと考える方」あるいは「株式市場全体では上がりにくいが、なかには成長する企業や産業はあるだろうと考える方」は、日常の「肌感覚」として、イノベーションや時代の変遷を感じられているのでしょう。
イノベーションによって成長産業と衰退産業、成長企業と衰退企業が生まれます。みなさんのなかには、新NISAの「成長投資枠」で個別株式に投資をし、「FIREを達成したい」と考える方もいらっしゃるでしょう。
ただし、成長する産業や企業に資本を投じることは決して簡単ではなく、誰でもできるというわけではありません。
なぜなら、株式市場は、そのイノベーションを額面どおりに評価することはなく、たいてい株価に「熱狂」を上乗せするためです。ときには「イノベーションにともなう株価上昇幅」よりも、「熱狂による株価上昇幅」のほうがはるかに大きくなります。
ただ、株価上昇のうち、どこまでが「イノベーション分」で、どこまでが「熱狂分」なのかは、イノベーションの全体像や実体が「後からわかる」ことで初めて評価ができるものです。
こうした「熱狂」の存在を前向きにとらえるならば、「新しいイノベーションにともなう株式市場のブームを認知してからでも、まだブームの追い風は続くし、それに乗ることができる」ということかもしれません。
問題は「熱狂」の分、その後の反動としての「収束」と「悲観」がついてくるということでしょう。
「もはや超割高」と思っても、そこから上昇が何年も続く場合があります。「もはや超割安」と思っても、そこから株価がさらに半値になる場合もあります。こうした荒波を乗り越えるのは簡単ではありません。
こういうと、「タイプA」の方は「長期投資すればよい」とおっしゃるでしょうが、多くの方にとって、大幅上昇や大幅下落をなにもせずに受け流すことは簡単ではありません。
こうした株式市場の動きを所与とすると、そこで比較的安定して勝ち続ける一流の投資家や運用者たちは、「たとえロジカルにはorファンダメンタルズ的には正解でも、投資のリターンはマイナスが続くこと」は避けますし、「自分の考える方向は真逆でも、しばらくは他者が進む方向についていくこと」を求められます。
資産運用もプロスポーツ選手と同じく、厳しい世界です。実際のデータも生き残りが難しいことを示唆します。