2. 節税目的の吸収合併を行った事例
TPR事件/特定資本関係5年超要件を満たす合併における法法132条の2の適用
東京高等裁判所令和元年(行コ)第198号法人税更正処分等取消請求控訴事件(棄却)(上告及び上告受理申立て)令和元年12月11日判決(TAINSコードZ269-13354)
(一部抜粋、地裁)
(カ)
小括
以上のとおり、原告は、経理部から吸収合併スキームが提案された時点においても、旧B社の有する未処理欠損金額の全てを原告に引き継ぐという税負担減少を主たる目的として本件合併を企図したものである上、その後、新B社の概要を決定する段階からは、旧B社の有する未処理欠損金額の全てを原告が利用するという税負担減少のみを目的として本件合併を行ったことが明らか(※下線筆者)であり、
原告が本件合併の目的として主張する旧B社の損益改善は、本件単価変更を行わなければ達成できなかったものである。また、原告が本件合併のもう一つの正当な事業目的として主張する本件事業の管理体制の強化についても、本件合併を行わずとも旧B社の行う事業を予算会議の審議の対象とすることにより達成することは可能であった。
加えて、行為の不自然性の程度との比較の観点からみても、本件合併の合理性を説明するに足りるだけの事業目的等が存在するとは認められないことからすれば、本件において、税負担を減少させること以外に原告が本件合併を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事情があったとは認められない。(※下線筆者)
内部証拠は納税者の主張となりますから、有利な方向で働くのはよいですが、上記のように内部会議録等々であからさまに税負担軽減目的とあれば、当局の心証は必然的に悪くなります。本件では、結果として納税者の主張が税負担軽減と捉えられたともいえ、内部証拠の記載や保全には十分な留意が必要であることがわかります。
経済的合理性の例
金融機関提案の場合、金融機関に考えさせるほうがよいです。ご自身でプランニングする方は上場企業のプレスリリースを参照にしたり、下記のような国税資料をもとに作成したりと、いわゆる土台を用意して、当該案件に沿った流れにすると作成しやすいです。
(例)経済的合理性の例
「2 株式交換の目的等(※3)
H2Oリテイリング及びイズミヤは、少子高齢化に伴う消費活力の減退、ネット通販の拡大を中心とする購買スタイルの変化等、顧客の消費動向が急速に変化するなか、市場シェアの確保、様々なニーズの変化を確実に捉える商品・売場・販売チャネルの提供により、顧客からの支持をより強固なものとすることが急務であると認識しており、
本件株式交換は、共通の理念を持つ両社が、関西圏という地域の中で多様な業種業態、取扱商品群を揃えた総合小売サービス業グループを構築することを目的として行うものです。
本件株式交換による経営統合後は、両社の保有するポイントサービス制度を共通化して新しい顧客還元サービスを構築するほか、相互の人事交流を積極的に図りつつ、両社グループの多様な店舗網による情報収集力をもとにした商品開発や物流機能の相互活用などにより、総合小売業グループ全体として強固な体制を構築することを目指しています。」
各取引、特に金額的に重要な取引、後々事実認定ベースになりそうな取引においては、このような証拠を文書化しておくことが必須といえます。
※3:大阪国税局文書回答事例「別紙持株会社を株式交換完全親法人とする株式交換における事業関連性の判定について」より抜粋。
(参考)
本稿脱稿時点で、「タワマン節税是正検討、評価額を適正水準に政府与党」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQUA287CC0Y2A121C2000000/)という報道があります。
伊藤 俊一
税理士
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