病床の妻を亡くした三男に、長兄「遺産、無駄にしなくてよかったじゃん」相続の現場で放たれた、あまりにむごい一言【弁護士が解説】

病床の妻を亡くした三男に、長兄「遺産、無駄にしなくてよかったじゃん」相続の現場で放たれた、あまりにむごい一言【弁護士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

相続の現場では、相続人同士の思いや欲求がぶつかり、トラブルになるケースがあります。しかし、なかでも恐ろしいのは、相手の思考がこちらの思考と大きくかけ離れており、全くかみ合わないケースです。実情を見ていきましょう。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が解説します。

兄たちに踏みつけられた、末っ子三男の切実な思い

相続の現場では、家族同士の円満なコミュニケーションを経て、スムーズな資産承継が実現するケースがある一方、これまで鬱積してきた家族間の不平不満、あるいは欲求が、相続をきっかけに噴出し、収拾がつかなくなるケースもあります。

 

弁護士のところに持ち込まれる「相続トラブル案件」は、円満な着地を模索するものより、決別覚悟のものが圧倒的に多いです。

 

しかし、トラブルにおいては、対立している人同士が、同様に怒りを募らせているとは限らず、両者間に相当な温度差があり、話し合いがかみ合わないケースもあります。

 

ある男性のケースです。男ばかりの3人きょうだいの末っ子で、兄たちからはいつも軽くあしらわれ、まともに話を聞いてもらうこともありませんでした。

 

父親は遺言書を残さずに亡くなりましたが、地主の家系の出身だったことから、それなりの資産がありました。しかし、相続はすべて長男とと二男で話を進め、男性はほとんど相続放棄を迫られるようなかたちになりました。

 

いつもなら兄たちのあしらいを甘んじて受け入れるところですが、今回はどうしてもそれができない事情がありました。

 

三男であるこの男性の妻はがんを患っており、最後の望みをかけるため、先進医療を受ける治療費としてお金が必要だったのです。しかし、兄たちにそれを必死に訴え食い下がっても、まともに取り合ってもらえません。そうこうしているうちに妻の容体は悪化し、亡くなってしまいました。

 

妻が亡くなった以上、高額な医療費は必要ありません。しかし、長男の「親父の遺産、無駄にならなくてよかったじゃん」というひとことで、男性は我慢の限界を超えました。

 

男性はいま、兄たちと遺産分割を巡って係争中です。

高級マンションを相続後、入り浸るようになった義姉一家

ある女性のケースです。この女性は資産家の一人娘で、数年前に亡くなった父親から、かなりの金融資産と都心部の高級マンションを相続しました。いまは夫婦でそのマンションに暮らしています。子どもはいません。

 

夫には姉がひとりいるのですが、夫はこの姉にまったく頭が上がりません。

 

立地のいいマンションに引っ越したことで、たびたび義姉一家の訪問を受けるようになり、女性は大変迷惑に思っていました。

 

夫にもそのことを伝え、来訪を断るように頼むのですが、煮え切らない返事ばかりで、結局家に入れてしまいます。そのうち、休日が近くなると体が震えるといった症状が出始め、とうとう我慢できなくなった女性は、直接義姉に電話し、来訪しないよう伝えたのでした。

 

すると当日の夜、義姉から連絡を受けたと思われる夫は、帰宅するなり「家族をないがしろにするな!」と激怒。女性を怒鳴りながら、テーブルの上のものを床に払い落とすといった乱暴を働きました。

 

女性はたまらず「あなたのお姉さんは私の家族じゃないわよ!」と言い返すと、夫は「いい気になりやがって…」と吐き捨て、自室に閉じこもってしまいました。

 

夫と冷戦状態が続くなか、女性の携帯電話に義姉から電話がありました。てっきり謝罪の電話だと思いましたが、出てきた言葉は、「あの子、わがままなところがあるけど許してあげて」という、斜め上なものでした。

 

想定外の展開で言葉に詰まっていると、義姉はさらに畳みかけました。

 

「しっかり理解しておいてほしいんだけど、弟もあなたも、将来はうちの子たちの世話になる立場なの。それに、あなたの財産だって、最終的にはうちの子のものになるんだから…ね?」

 

電話口からの優しく諭すような声色に、女性は背筋がゾッと寒くなりました。

 

このままでは大変なことになる。そう思った女性は、夫との離婚を早々に決意しました。多少の慰謝料を渡すことになっても、とにかく縁を切りたいと、現在弁護士をはさんで話し合いの最中です。

 

自分が必死に訴えていることが、相手にまったく伝わらない、理解されないというのは、ある意味非常に恐いことです。話し合っても折り合いがつかないのであれば、早々に見切りをつけ、法的手段等で自分の権利を守ることも、重要な選択肢であるといえるでしょう。

 

 

(※守秘義務の関係上、実際の事例と変更している部分があります。)

 

 

山村法律事務所
代表弁護士 山村暢彦

 

 

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