(※画像はイメージです/PIXTA)

配偶者の死後、婚外子の存在が発覚するケースは少なくありません。近年では婚外子も嫡出子と同等の相続権が認められているため、遺産分割のプランを変更する必要が生じることもありますが、なにより面識のない相手と遺産分割協議のテーブルに着くなど、想像以上の大きなストレスがかかってしまいます。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が実例を交えて解説します。

派遣先のエリート社員と結婚、タワマン生活へ

30代の専業主婦、由香さんの身に起こったケースです。

 

由香さんは大学卒業後、新卒で入社した会社が合わず退職。その後はずっと派遣社員としてあちこちで働いていましたが、数年前、派遣先の大手外資系金融会社で夫となる孝弘さんと出会い、結婚しました。

 

孝弘さんはエリートで人望も厚く、将来を嘱望されていました。社内外でも孝弘さんに好意を持っていた女性は少なくなく、由香さんは大変な妬みを買ったといいます。

 

由香さんは、派遣先の女性従業員との関係が悪化し、精神的ストレスを受けて勤務が難しくなったことから、孝弘さんに「落ち着くまで専業主婦となってはどうか」と提案を受け、従いました。

 

孝弘さんと由香さんは、結婚を機に都内のタワーマンションの一室を購入しました。孝弘さんは結婚後も変わることなく優しく、由香さんはとても幸せな日々を過ごしていたといいます。

 

生活が落ち着いたら仕事に復帰するつもりだった由香さんですが、親しい友人や親族が次々と出産するのを目の当たりにし、次第に焦りの気持ちが出てきました。孝弘さんに気持ちを打ち明けると、孝弘さんも考えに同意してくれたので、仕事への復帰より、まずは子どもを授かるよう、ライフプランを変更したのです。

幸せな生活に訪れた「まさかの事態」

由香さんと孝弘さんに第一子となる翔太ちゃんが生まれたのは、それから3年後でした。

 

孝弘さんは順調に出世して仕事も多忙になっていくなか、由香さんも慣れない子育てに奮闘していました。孝弘さんも非常に翔太ちゃんをかわいがり、どんなに遅く帰宅しても、必ず寝顔を見ていたそうです。

 

しかし、由香さんの人生は暗転します。

 

平日の夜、由香さんのスマホに知らない番号の着信がありました。

 

「もしもし?」

 

「孝弘さんの奥さんですか?」

 

「そうですが…」

 

電話の声は緊張でこわばっていました。

 

「私、孝弘さんの部下の佐藤と申します。孝弘さんが出先で事故に遭いまして…」

 

由香さんは翔太ちゃんを抱えタクシーに飛び乗り、孝弘さんの部下から聞いた病院に駆けつけました。

 

交通事故に遭った孝弘さんの状況は重篤で、数日の意識不明のあと亡くなりました。

 

由香さんはショックのあまり泣き叫び、なにもかも手を付けられなくなってしまいました。そのため、急遽上京してきた由香さんの両親、そして隣県在住の孝弘さんの両親が、葬儀の手続き等を粛々と進めました。

 

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