今週の注目点…米景気動向と円安阻止介入
米7~9月実質GDP速報値が前期比年率で4.9%といった異例の高い伸びとなったことに象徴された「強すぎる米景気」。
そんな米景気が10~12月期にかけてどれだけ減速するかが、現在の金融市場の大きな注目点となっています。
その意味では、今週発表予定の米経済指標のなかでも、これまで注目されていたCPI(消費者物価指数)などのインフレ指標より、小売売上高などの景気指標への反応が大きくなる可能性があります。
そんな米景気指標は、今のところは前回実績より弱い結果になるといった予想が多いようです。
では、予想通りに米景気の減速を確認するところとなり、米金利は一段と低下するのでしょうか。先週こそ米金利および日米金利差との関係が薄れたとはいえ、やはり米ドル/円の行方を考えるうえでは、米金利および日米金利差の関係が重要な目安であることに変わりはないでしょう。
2023年のこれまでのところの米ドル高値は151.7円程度、そして151.9円は2022年10月21日に記録した米ドル高値です。
以上から、151円台後半は米ドル/円にとって、テクニカルには大きな分岐点の可能性がありそうです。要するに、米ドル/円の上昇は151円台後半でも止まらないようなら、155円を目指す新たな段階に入る可能性が出てくるのではないでしょうか。
こういったなかでは、日本の通貨当局による円安阻止介入との攻防には一段と注目が高まることになりそうです。
円安阻止介入は、2022年に3回行われましたが、いずれも介入直後は最大5円程度の米ドル急落となりました。その意味では、仮に今回152円前後で円安阻止介入が実現した場合は147円程度まで米ドルが急落する可能性もあるでしょう。
介入で米ドル急落となった場合でも、これまでは割安になった米ドル買いが広がることで比較的早い段階で米ドルは反発するのが普通でした。
ただ、ここまで一本調子で米ドル/円が上昇してきたことで、為替市場のポジションは米ドル買い・円売りに大きく傾斜している可能性があり、更なる米ドル買いの余力には微妙な面もあります(図表3参照)。
また、次第に年末が近付くなかで、とくに個人投資家は米ドル買いポジションの損益確定の意識が高まっている可能性があります。
要するに、更なる米ドル上昇余地が限られ、むしろ米ドル下落リスクが懸念されるようなら、米ドル買いポジションの手仕舞いで米ドル売りに転じる可能性もあるでしょう。
そんな米ドル買いから米ドル売りへ転換する主な手がかりが、米金利の低下や円安阻止介入ということになるのではないでしょうか。
以上を踏まえると、今週は介入にらみで米ドルは高値波乱含みの展開が予想されます。
個人的には円安阻止介入も十分ありうると考えているので、更なる米ドル高の余地は限られ、介入があった場合は5円程度の米ドル急落の可能性もあるとの考え方から、米ドル/円の予想レンジは147~153円中心で想定したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】