(写真はイメージです/PIXTA)

2023年9月のASEAN主要6ヵ国の貿易統計を見ると、減少幅は縮小したものの、輸出は7ヵ月連続の前年割れとなりました。本稿ではニッセイ基礎研究所の斉藤誠氏が、ASEAN各国の貿易統計を基にASEAN主要6ヵ国の貿易状況と今後の見通しについて解説します。

ASEAN主要6ヵ国の輸出は7ヵ月連続の前年割れ

2023年9月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比7.4%減(前月:同12.1%減)と減少幅が縮小したものの、7カ月連続の前年割れとなった(図表1)。

 

輸出の基調は昨年半ばまでコロナ禍からの経済活動の回復や商品市況の高止まりにより好調が続いたが、その後は欧米を中心とした外部環境の悪化や資源価格の軟化により増勢が鈍化し、昨年11月以降は前年比で減少傾向にある。

 

輸出額は今年に入って底入れしており、年末にかけて前年同月を上回るとみられるが、中国向け輸出の回復が遅れている上、金融引き締めの影響による欧米経済の需要鈍化が見込まれるため、輸出の持ち直しの動きは緩やかなものとなりそうだ。

 

ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、東アジア向けが同6.1%減(前月:同11.4%減)、北米向けが同6.1%減(前月:同7.5%減)、EU向けが同10.4%減(前月:同19.5%減)、東南アジア向けが同13.5%減(前月:同16.5%減)となり、それぞれマイナス幅が縮小したものの、減少傾向が続いた(図表2)。

 

ベトナム

ベトナムの9月の輸出額(通関ベース、確定値)は前年同月比2.1%増(前月:同6.5%減)の306億ドルとなり7カ月ぶりに前年を上回った(図表3)。

 

輸出の基調は昨年後半から海外需要の鈍化や一次産品価格の下落により減少傾向にあるが、足元では電子製品が増加に転じるなど持ち直しの動きがみられる。

 

また輸入額も前年同月比0.3%増(前月:同5.8%減)の284億ドルとなり11カ月ぶりに増加した。結果として貿易収支は+20.0億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から12.4億ドル縮小した。

 

輸出を品目別にみると、輸出全体の約2割を占める電話機・同部品が前年同月比0.8%増(前月:同15.5%減)となり2ヵ月ぶりに増加すると共に、コンピュータ、電子製品・同部品が同5.5%増(前月:同6.4%増)となり3カ月連続で増加した(図表4)。

 

アパレル関連については履物が同25.5%減(前月:同25.1%減)、織物・衣類が同6.2%減(前月:同14.1%減)と低迷した。農林水産物を見ると、水産物(同5.0%減)と天然ゴム(同10.0%減)、コーヒー(同28.2%減)が減少した一方、野菜(同167.1%増)やコメ(同37.8%増)、カシューナッツ(同31.8%増)が増加するなど、品目によってばらつきが見られた。

 

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同1.2%減(前月:同9.9%減)とマイナス幅が縮小すると共に、地場企業は同12.9%増(前月:同3.7%増)と2ヵ月連続で増加した。

 

タイ

タイの9月の輸出額(通関ベース)は前年同月比2.1%増(前月:同2.6%増)の254億ドルとなり、2ヵ月連続で増加した(図表5)。

 

輸出の基調は昨年後半から海外需要の鈍化や一次産品価格の下落により減少傾向で推移しているが、足元では中国向け輸出が回復して持ち直しの動きがみられる。

 

一方、輸入額は前年同月比8.3%減(前月:同12.8%減)の233ドルとなり、7ヵ月連続で減少した。結果として、貿易収支が+20.9億ドルとなり、前月から17.3億ドルから黒字が拡大した。

 

輸出を品目別にみると、全体の約7割を占める工業製品が同1.7%減(前月:同4.6%増)と2ヵ月ぶりに減少した(図表6)。

 

製造品の内訳を見ると、自動車・部品(同0.8%増)と機械・装置(同0.7%増)は小幅に増加したものの、石油化学製品(同10.8%減)や電子製品(同10.2%減)、金属・鉄鋼(同3.8%減)、家電製品(同3.7%減)はそれぞれ減少した。

 

また鉱業・燃料は同14.6%増(前月:同19.3%増)となり、石油製品(同25.6%増)を中心に2ヵ月連続で増加した。このほか、農産物・同加工品は同7.7%増(前月:同2.6%減)と5ヵ月ぶりに増加した。

 

農産物・同加工品の内訳をみると、コメ(同51.4%増)とドリアン(同1103%増)は増加したが、天然ゴム(同30.3%減)やゴム製品(同26.2%減)、加工食品(同1.7%減)は減少するなど、品目によってばらつきが見られた。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月7日に公開したレポートを転載したものです。

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