(写真はイメージです/PIXTA)

英国では11月1日、金融政策委員会(MPC)が開催され、11月2日に金融政策報告書(MPR)が公表されました。「中期的な均衡失業率」が上昇した一方で、政策金利の維持が決定されました。本稿ではニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、今回のMPCとMPRの内容から英国経済の今後の見通しについて解説します。

4.議事要旨の概要

記者会見の冒頭説明原稿や金融政策報告書および議事要旨の概要(上記金融政策の方針で触れられていない部分)において注目した内容(趣旨)は以下の通り。

 

・GDP成長率見通しは、2023年0.50%、24年0%、25年0.25%、26年0.75%(8月時点では023年0.50%、24年0.50%、25年0.25%)

  • CPI上昇率は、2023年4.75%、24年3.25%、25年2%、26年1.5%(10-12月期の前年比)(8月時点では、23年5%、24年2.5%、25年1.5%)
  • 失業率は、2023年4.25%、24年4.75%、25年5%、26年5%(10-12月期)(8月時点では、23年4.00%、24年4.5%、25年4.75%)

 

(本日の政策決定)

・自己満足に浸る余地はないことを明らかにしておきたい

  • インフレ率を2%目標に戻すために、我々は十分な期間、十分に高い金利を維持するつもりである
  • 更なる利上げが必要かを注意深く見ていくつもりである
  • 利上げしないとしても、利下げを考えるのは時期尚早である

 

(中期的な見通し)

・賃金上昇率の継続的な強さを受けて、MPCは「中期的な均衡失業率」の評価をやや引き上げ、賃金と物価の上昇がより継続すると見積もった

  • この効果により、MPCは労働市場の弱さが需要要因だけでなく、供給力の低下からも生じていると判断している
  • これは雇用伸び率が鈍化するなかでも賃金伸び率が継続的に強いことを説明する助けになるだろう

 

(供給・費用・価格)

・委員会は賃金と国内物価について議論した

  • 最近、民間部門の週当たり定期賃金が前年比で上昇していることは、他の賃金指標では見られていないが、賃金上昇率が7%付近の高さで維持されていることは共通していた
  • 同時にCPIの前年比では、総合指数がエネルギー、食料、コア財インフレ率の低下を受けて減速しているものの、サービスインフレは有意には減速していない
  • CPIインフレ率の直近の持続性は、一部には企業の価格設定行動を含む2次的効果を反映している
  • 11月のMPR見通しでは、MPCは最近の予想外の賃金上昇は、労働市場の摩擦がより持続的であることや過去の実質所得の減少に抵抗することによって生じる、中期的な失業率の上昇に関連していると判断した
  • 失業率の上昇がこうした供給要因に関係していれば、労働市場の緩和はより限定的で賃金の押し下げ圧力もより小さくなる

 

(政策金利決定)

・6人の委員が、今回の会合で政策金利を5.25%に維持することが妥当であると判断した

  • 前回会合以降に、英国経済のデータから得られた情報は限定的である
  • GDP成長率は弱まっており、労働市場は引き続き軟化している
  • CPIインフレ率は今後数四半期にわたって、大幅に低下し、週当たり賃金にみられる加速は注目には値するものの、より広範な賃金指標には見られない
  • このグループの大部分の委員にとって、MPCの最新の見通しは、2%目標への到達のためには、この制限的な金融政策が長期間続くことが正当化されることを示していた
  • 更なる政策金利の引き上げの可能性は残されている
  • 1人の委員にとっては引き締めすぎるリスクが引き続き積みあがっていた
  • 金融政策効果のラグにより、過去や最近の利上げの影響が依然として顕在化していないと見られた

 

・3人の委員が今回の会合で、政策金利を0.25%引き上げ5.5%にすることを望んだ

  • 経済活動には鈍化の兆しがあるが、家計の実質所得は上昇しており、生産の先行指標は引き続きプラスを維持している
  • 労働市場は引き続き相対的にひっ迫し、中期的な均衡失業率の上昇や労働需要の強さと整合的であり、緩和速度は鈍化している
  • これらの委員は、引き続きより持続的なインフレ圧力の証拠があると判断している
  • この会合における政策金利の0.25%ポイントの引き上げが、より深くインフレの持続性が定着するリスクに対処し、中期的な2%目標の持続に向かうために必要である

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月6日に公開したレポートを転載したものです。

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