3.金融政策の方針
今回のMPCで発表された金融政策の概要は以下の通り。
・MPCは、金融政策を2%のインフレ目標として設定し、持続的な経済成長と雇用を支援する
- 委員会は政策金利(バンクレート)を据え置き、5.25%とする(6対3で決定※2)、3名は0.25%ポイント引き上げ5.50%とすることを主張した
・委員会は経済活動とインフレ率に関する見通しを11月の金融政策報告書(MPR)として公表した
- そこでは、市場観測の政策金利経路として、24年10-12月期まで現在の5.25%程度の政策金利が維持され、26年末にかけて4.25%程度まで緩やかに低下すると想定されており、8月の見通し時点の前提よりも低下している
・MPCの前回会合以降、長期金利は先進国経済で上昇した
- GDP成長率は米国で予想よりも強かった
- 先進経済の基調的なインフレ圧力は引き続き強い
- 中東での出来事の後、石油の先物曲線はやや上昇したがガスの先物曲線はほぼ変化がなかった
・英国のGDPは23年7-9月期に横ばいと予想され、8月報告書の見通しよりも弱い
- いくつかの企業調査では10-12月期の生産が若干減少することを示しているが、他のデータはそれほど悲観的ではない
- GDP成長率は10-12月期に0.1%となると予想され、これも前回の見通しよりも弱い
・MPCは労働市場の動向を確認するために、引き続き単一の指標ではなく広範なデータを評価する
- 労働力調査を取り巻く不確実性は上昇しているため、この方針の重要性が強調される
- 経済活動の鈍化のため、雇用伸び率は23年下半期に軟化するが、8月報告書の見通しよりも強いと見られる
- 求人数の減少や採用活動の困難さが緩和するとの調査結果もまた、労働市場の軟化を示している
- 中銀エージェントも同様に採用制約の緩和を報告しているが、いくつかの部門においては熟練者不足が根強い
・CPIインフレ率の前年比は9月および7-9月期では6.7%まで低下しており、これは8月報告書の見通しよりも低い
- この下振れは主にコア財インフレ率が予想よりも低かったことが反映されている
- サービスインフレは7%付近で8月報告書の予想よりもやや低い
- CPIインフレ率は2%目標を大きく上回っているが、急激な低下を続け、23年10-12月期には4.75%、24年1-3月期には4.5%、24年4-6月期には3.75%となると見られる
- この低下はエネルギー、コア財、食料品インフレの低下で説明されるが、1月以降はサービスインフレもやや低下する
・MPCの最新の市場観測政策金利を前提にした最も起こりそうな、最頻値見通しではCPIインフレ率は25年末までに2%目標に低下する
- その後は、経済活動の弛み(slack)度合いが高まり国内のインフレ圧力を軽減させるにつれ目標を下回る
・MPCは引き続きこの最頻値見通しについて、リスクが上方に傾いていると評価している
- 国内の2次的効果(second round effect)と賃金は、その発生よりも解消に時間を要すると見られる
- また、中東の出来事がエネルギー価格のインフレ率のリスクを上振れさせている
- この偏りを考慮したCPIインフレの平均見通しは2年後に2.2%、3年後に1.9%となる
- 政策金利を5.25%に維持した24年下半期以降の曲線が高めとなる代替前提では、平均インフレ率は2年後に目標に到達し、3年後に1.6%まで低下する
・MPCの責務が、英国の金融政策枠組みにおける物価安定の優位(primacy)を反映して、常にインフレ目標の達成であることは明らかである
- この枠組みでは、ショックや混乱の結果、物価が目標から乖離する場合があることを認識する
- 金融政策により、CPIインフレ率が中期的に2%目標に安定して戻るようにする
・前回のMPCの決定以降、英国のインフレ率の持続性に関する主要な指標から得られる情報は少ない
- 金融引き締めが労働市場や、一般に実体経済の勢いにいくらかの影響を及ぼしているとの兆しは引き続き見られる
- 引き締めサイクルを開始して以降の政策金利の大幅な引き上げにより、現在の金融政策姿勢は制限的である
- 今回の会合で委員会は政策金利を5.25%に維持することを決定した
・MPCは引き続き、基調的な労働市場のひっ迫感を示す一連の指標、賃金上昇率、サービス物価インフレの動向といった、経済全体におけるインフレ圧力の持続性と回復力について、引き続き注視する
- 金融政策は、委員会の責務にもとづき、インフレ率を中期的な2%目標に安定的に戻すため、十分な期間にわたり十分に制限的にされる必要がある
- MPCの最新の見通しは金融政策を長期にわたって制限的にする必要があることを示している
- 仮により永続的なインフレ圧力があるのであれば、より引き締め的な金融政策が必要となる
※2 今回反対票を投じたのは、グリーン委員、ハスケル委員、マン委員で0.25%の利上げを主張した(前回はグリーン委員、ハスケル委員、マン委員に加えてカンリフ委員(副総裁)が0.25%の利上げを主張した。なお、カンリフ委員は10月で委員を退任しており、11月からは新たにブリーデン氏が副総裁として委員に就任している。また、ブリーデン氏は今回の決定で据え置きを主張した)。