(※写真はイメージです/PIXTA)

シービーアールイー株式会社(CBRE)の「ジャパンオフィスマーケットビュー 2023年第3四半期」で各都市のオールグレード空室率をみると、東京と名古屋では対前期比で上昇、大阪では同低下しました。地方都市に目を向けると、既存ビルの空室消化が進み、全国的に堅調な需要がみられるといいます。本稿では、エリア別のオールグレードの需要動向について詳しくみていきます。

東京‐賃料は3つのグレードでいずれも対前期比横ばい

今期(Q3)の空室率はオールグレードで対前期比+0.3ポイントの5.2%、グレードAで同+0.9ポイントの6.6%となった。グレードAビル2棟を含む新築ビルが空室を残して竣工したことが主因。

 

一方、既存ビルでは、新築に比べ賃料に割安感のあるビルが多く、今期も堅調に空室消化が進んだ。減床や二次空室が複数発生したものの、ビルのグレードアップ、立地改善、建て替えによる移転などでまとまった空室が消化された。

 

新築ビルを除く築1年以上の既存物件の空室率(既存空室率)は今期4.0%と、市場全体の空室率5.2%を1.2ポイント下回っている。1年前の2022年Q3時点では市場全体の空室率4.9%に対し、既存空室率は4.3%と、その差は0.6ポイントであった。しかし、足元では既存空室率の低下によりこの差は拡大しており、空室が新築ビルに偏在する傾向を示唆している。

 

今期のグレードA賃料は2期連続の対前期比横ばい。グレードAマイナス、グレードBも同横ばいで、ともに2020年Q2以来続いていた賃料の下落は一服した。

 

今期、市場全体の空室率は上昇したものの、既存ビルでは空室を抱えるビルの総数は減ってきている。このため、賃料を引き下げるビルは減っている上に、空室消化が進んだビルでは、賃料を従前の水準に上げ戻す動きが増えている。

 

ただし、グレードB未満の中小型ビルでは、テナント確保のために賃料を引き下げる動きが、引き上げの動きを依然としてやや上回っている。このため、オールグレード賃料は対前期比-0.1%とわずかながら下落した。大型ビルが空室を残して竣工することで賃料に下押し圧力が働く傾向は今後も続くと予想される。

 

当面、賃料は横ばい圏ながら、やや弱含みで推移するとみられる。グレードA賃料は向こう1年間で-0.4%を見込む。

大阪‐グレードAの空室率は4期連続の低下

今期(Q3)のグレードAの空室率は、対前期比-0.5ポイントの3.0%と4期連続の低下となった。築浅ビルで、郊外からの立地改善およびグレードアップ移転と館内増床により、大型の空室が複数消化されたことが主因。

 

来年に竣工が予定されている大型の物件と比較して、既存のグレードAビルの賃料水準に割安感が出ていることも、空室消化が進んでいる一因となっているようだ。

 

グレードBでは、昨年竣工したビルへの移転による二次空室が、前期に続き今期も発生した。一方で、建て替えによる移転、立地改善や拡張を目的とした移転で空室が消化されたため、同-0.5ポイントの3.4%となった。

 

前期に引き続き、需要は総じて堅調で、既存ビルを中心に空室消化が進んでいる。よってオールグレードでも同-0.4ポイントの3.3%となった。しかし、2024年はオールグレードで過去最大、現在の貸床総面積の5%強に相当する約9万坪の大量供給が予定されている。このため、2024年は空室率が再び上昇基調になると予想される。

 

今期の賃料は、グレードAで対前期比-0.2%の23,950円/坪、グレードBで同横ばいの14,700円/坪、オールグレードで同-0.1%の14,110円/坪となった。グレードAでは下落幅は縮小しているものの、テナント確保のための賃料調整は続いている。グレードA賃料は向こう1年間で-1.5%を見込む。

名古屋‐5年ぶりの新規供給により、グレードAの空室率は4期ぶりに上昇

今期(Q3)のオールグレード空室率は対前期比+0.6ポイントの5.8%、グレードAは同+0.8ポイントの8.5%と、いずれも4期ぶりに上昇した。グレードAビル1棟を含む計1.7万坪の供給が空室を残して竣工したことが主因。しかし、需要は前期に続き堅調であった。

 

グレードAビルの供給は名古屋では5年ぶりで、他エリアに比べ築古ビルの割合が多い栄エリアの中心に立地している。このため、近隣テナントのオフィスの環境改善を目的とした移転需要の受け皿となり、名古屋における昨今の新築ビルの中では比較的高稼働で竣工した。

 

一方、既存ビルでも、賃料が割安なビルを中心に、グレードアップや立地改善、拡張移転、館内増床などで空室消化が進んだ。この結果、今期の新規需要は1.1万坪と、過去の一四半期平均0.3万坪を大きく上回った。

 

空室率は今後も新規供給を理由に上昇基調が続くとみられる。2024年Q1には1.4万坪の供給が控え、既存ビルでは新築ビルへの移転による二次空室の発生も予想されるためだ。

 

今期のオールグレード賃料は対前期比横ばいとなったが、グレードA賃料は同+0.2%と、2020年Q1以来の上昇となった。空室が減ったビルや引き合いが増えているビルでは賃料を引き下げる動きが落ち着き、一部では従前の水準に上げ戻す動きもみられた。

 

ただし、今後の需給緩和により、賃料は緩やかながら再び下落基調に転じるとみられる。グレードA賃料は向こう1年間で-2.3%を見込む。

 

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※本記事はシービーアールイー株式会社(CBRE)のジャパンレポート「ジャパンオフィスマーケットビュー 2023年第3四半期」より一部抜粋・再編集したものです。
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