「環境変更」が有益なケースのサイン
次に、某スタートアップ企業にマネジメント職として参画した30代のBさんのケースです。
「いまの会社が掲げるビジョンに強く共鳴して参画しました。採用オファー時に提示されたのは、自分がこれまで別業界で実績を上げてきた領域での経験を持ち込んでの市場開拓。自分としても、これなら即戦力として貢献できると思い、転職を決めたのです」
ところがいざ入社すると、いくつかの事情が重なり、オファー時のミッションとは異なる役割を担うことになりました。社長も丁寧に説明してくれたため、それならばと担当変更を受け入れました。
「しかし結果としては、どうしても水が合わないといいますか。意味・意義は理解できたものの、その担当業務が自分としてしっくりこず、肌が合わないことから、気持ちも沈みがちになってしまって……」
前向きに転職を考える第3のタイミングとして挙げられるのは、③「環境を変えたほうがよい状況」です。
仕事が自分に合わなくなってしまった。そのせいで疲労や燃え尽きを感じる。楽しかったはずの仕事に激しい疲労を覚えるようになり、仕事に行くために朝、家を出ることさえつらい。会社や人間関係、待遇に不満がある訳ではないが、担当職務が自分に合わなくなってしまった……。
これらは誰にでも起こり得るものです。状況を改善するには、まずは会社や上司・社長に状況を相談すべきでしょう。それで理解してもらい、担当変更・役割変更することで状況が改善できれば、それに越したことはありません。
しかし、職務を変える機会が自社にない(望ましい役割には現任者がいて担当変更は難しい、スタートアップや中堅・中小企業で役割そのものがない等)ならば、転職を選択肢に加えて、別の会社での望ましい場を探すのは妥当というか、急務のことです。
「社外逃避」が積極的に認められる2つのサイン
筆者が経営層や幹部層の転職を支援していると、折々その相談者の現職企業における内情を細かく聞く機会もあります。そのなかには、コンプライアンス的にかなりまずいものも少なくありません。
とくに立場的に、なまじ経営メンバーであったり社長・経営陣の直下であったりするがゆえに、現場は知らないことでも、いろいろな動きややり取り、事実を目の当たりにせざるを得ないということを、幹部クラスはしばしば経験します。
こうした事情から生じる転職もあり得ます。前向きに転職を考えるべきタイミングとして、「社外逃避」が意味を持つ場合もあるのがこの立場でのケースです。
2つのサインとは④「現在の仕事を続けると、悪癖が身につく(と気づいた)」、⑤「職場が不健全な状態に陥っている」です。
④「現在の仕事を続けると、悪癖が身につく」については、倫理にもとるというレベルまでではないものの、企業体質として営業手法などでグレーゾーンを厭わない、顧客クレームを無視する、スケジュール管理がいい加減……など、一般的な感覚では「ちょっとどうなの?」と思うようなスタンスの企業・組織風土が挙げられます。
恐ろしいもので、こういう企業に所属し続けると、いつのまにかそれが自身にも染みついてしまうものです。そういう事態を避ける上で転職が現実味を帯びる訳です。
⑤「職場が不健全な状態に陥っている」のほうは、④のようなグレーゾーンを突き抜けて、もはや一線を越えてしまっている状態。
もしかしたら、一昔前、ふた昔前であれば「まあ仕方ないか」で片付いたかも知れませんが、昨今、これだけ社会性やコンプライアンスが問われる時代に、そうした環境で過ごすことは、自らのキャリアや生活面においてもリスクが大きいでしょう。
職場環境が要因で、とくに「人として」の部分で自身が悪い方向に変容するようなことがあってはなりません。この部分だけは、絶対に我慢してはいけないところでしょう。
一刻も早く、健全な職場への転出を図るべきだといえます。
仕事において「行き詰まり」を感じたとき、まずみつめ直したいのは、自分で大切にしていることであり、自分の仕事上のテーマ(パーパス)です。それが現在の職場にないのであれば、それは転職を考えるべき明らかなサインです。
転職の成功には「正当な理由」が不可欠です。誰もが納得する、なによりも自分自身が納得できる転職理由を携えて、転職活動に臨んでみましょう。
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