数々の危機を乗り越えてきたリクルートの人材活用術に学ぶ
転職先を選択する際、「最近の会社の評判」「事業やサービス・商品のレビュー」「年収をはじめとする雇用条件」などのいわゆる“スペック”を重視しがちですが、「働きがいを持って働ける職場かどうか」を軽視してしまうと、早期に再転職を余儀なくされるリスクが高まります。
では、転職活動においては、いったいどのようなポイントをチェックすればよいのでしょうか。
1つの指針として、リクルートの組織活性化の源泉に目を向けてみましょう。
リクルートはいまや連結売上高が2兆円を超える巨大な高成長・高収益企業です。過去にはリクルート事件やバブル崩壊によるダイエー傘下入り、紙のメディアからネットへの移行による既存事業モデル消滅の危機などを経験しましたが、それらをたくましく乗り越えてきた企業でもあります。
創業者の江副浩正氏を中心として生み出された、ライフイベント情報のマッチング・提供という秀逸なビジネスモデルこそが同社の大きな強みですが、リクルートが数々の危機を乗り越え、時代に適応した新たなビジネスを創出できたのには、同社独自の組織活性化の仕組み・理論がありました。
「やりがい」「働きがい」をかなえる5つの要素
そのリクルートの創業期から現在に至るまでの組織活性化の骨格を築き上げたのが、創業メンバーであった大沢武志氏です。
大沢氏は江副氏のもとで専務取締役も務め、リクルート創業以来30年にわたり活躍した後、組織人事関連のグループ会社も設立しました(2012年没)。適性検査「SPI」の開発者といえば、大沢氏の偉大さがイメージできるでしょうか。
筆者自身は大沢氏とは直接仕事を一緒にする機会はありませんでしたが、新卒入社で配属された人事部門で、またその後異動した広報室で、大沢氏が社内に残した数々の情報や資料を目にし、業務にも活用しながら「リクルート流の組織活性化、人材戦略、組織戦略」について学ぶ機会が多くありました。
リクルート事件の余波も収まらない1993年、リクルートがどのような心理学理論をベースに企業・組織をつくってきたかについて棚おろしを試みようと大沢氏が著した本が『心理学的経営』です。同書は2019年にPHP研究所からオンデマンドプリントで復刊され、人材関連の専門家やリクルート流の組織・経営に興味のある経営者の間で話題となりました。
そんな大沢氏が取り入れた理論の1つに、ハックマンとオルダムの「職務特性モデル」(Job-Characteristics-Model)のなかの「職務設計の中核的5次元」があります。これによれば私たちは、次の5つのポイントを満たされると、大きな「やりがい」や「働きがい」を感じるといいます。
第1の次元:タスク多様性(Skillvariety)
単調な仕事ではなく、自分が持つ多様なスキルや才能を生かせる仕事である
第2の次元:タスク一貫性(Taskidentity)
始めから終わり(完結)までの全体を理解した上で、関われる仕事である
第3の次元:タスク有意義性(Tasksiginificance)
他者の生活や社会にインパクトをもたらす、自社の組織にとって重要な仕事である
第4の次元:自律性(Autonomy)
自分で計画をたてたり目標設定したり、自分のやり方で進められる自由度の高い仕事である
第5の次元:フィードバック(Feedback)
自分の仕事の結果がどうなったのかを、その都度、知ることができる
現在の職場で、上の5つのポイントは満たされているでしょうか。
注目のセミナー情報
【減価償却】11月20日(水)開催
<今年の節税対策にも!>
経営者なら知っておきたい
今が旬の「暗号資産のマイニング」活用術
【国内不動産】11月20日(水)開催
高所得ビジネスマンのための「本気の節税スキーム」
百戦錬磨のプロが教える
実情に合わせたフレキシブルな節税術