「自分はできる人材だ」「売れる人材だ」と、転職活動においても自信満々なエグゼクティブ。そんな候補者には希望する企業からもすぐに声がかかり、大きな苦労もなく次の会社が決まりそうなものですが、そう簡単にはいかないようです。本稿では、株式会社経営者JPの代表取締役・CEOの井上和幸氏が、自信満々な人材によくみられるという、応募先企業から嫌われる「3つの姿勢」について解説します。
「ヘッドハントされたから」という転職理由
「別に辞める理由はなかったのですが、良い条件のスカウトがあったので移りました」
コンサルティングファームからIT(情報技術)企業、ゲーム会社、消費財メーカーの経営企画部門を経て、4度目の転職をしようとしている38歳のAさんは、応募先企業の役員面接で過去の転職理由について質問され、そのように答えました。
面接官の役員は続けて質問します。「なるほど。では今回はどのような理由で転職を考えているのですか」。Aさんはこれに答えて、「はい、Bエージェントから御社を紹介されたもので」。役員は「そうですか……」と一気にトーンダウンしてしまいました。
面接官の心の声を聞いてみましょう。
「……ほお、それはすごいですね。あなたは声がかかったらホイホイ会社を変えるのかな。であれば、うちで働いても同じだろう。こんな人材、うちにはいらないな」
この後も職務内容などの問答は続きましたが、実は、面接開始早々のこのやり取りでAさんは「NG判定」となっていました。
そもそも、Bエージェントから案件を紹介されて面接を受けに来たということは、本人がエージェントや転職サイトに登録していた事実を物語っています。
「結局、今回もこれまでの転職も、実は本人が職務に何か問題を抱えての話ではないか。スカウトとは登録先から案件紹介を受けただけのことではないか」
普通の面接者であれば、この程度の類推はすぐにします。
筆者も延べ数万人の職務経歴書・履歴書をみてきた経験から、転職を繰り返し、あえてそのすべての理由に「ヘッドハントされて」と記載する人には、自意識が強すぎる傾向を感じています。自己PRのつもりで記載しているのに、実はまったくの逆効果。企業側、とくに経営者や人事責任者は「自意識過剰だな」とネガティブに評価するでしょう。
本当にヘッドハントで転職した場合は、その経緯や理由もしっかり併記しましょう。当時の職務状況や心境、スカウト話の内容、転職先での期待値、自身が描く前向きな展望やチャレンジ……。こうしたものが備わっていれば、ヘッドハンティングは魅力的な経歴の1つです。ただし、Aさんのように「他社から声がかかれば、現職を捨てて動く人」と思われる可能性はありますから、その点は留意が必要です。
株式会社 経営者JP
代表取締役社長・CEO
1966年群馬県生まれ。1989年早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。人材開発部、広報室、学び事業部企画室・インターネット推進室を経て、2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年より株式会社リクルート・エックス(2006年に社名変更、現・リクルートエグゼクティブエージェント)。エグゼクティブコンサルタント、事業企画室長を経て、マネージングディレクターに就任。
2010年2月に株式会社 経営者JPを設立(2010年4月創業)、代表取締役社長・CEOに就任。経営者の人材・組織戦略顧問を務める。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供している。人材コンサルタントとして「経営者力」「リーダーシップ力」「キャリア力」「転職力」を劇的に高める【成功方程式】の追究と伝道をライフワークとする。 実例・実践例から導き出された公式を、論理的に分かりやすく伝えながら、クライアントである企業・個人の個々の状況を的確に捉えた、スピーディなコンサルティング提供力に定評がある。自ら2万名超の経営者・経営幹部と対面してきた実績・実体験を持つ。
著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48』(共著、東洋経済新報社)、『あたりまえだけどなかなかできない 係長・主任のルール』(明日香出版社)、『プロフェッショナルリーダーの教科書』(共著、東洋経済新報社)、『人物鑑定法 あの人も、丸見えになる』(経済界)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。取材・コメント・出演実績として、「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日刊工業新聞」「週刊東洋経済」「日経ビジネス」「GQ JAPAN」「週刊現代」「プレジデント」「AERA」「月刊BOSS」「CIRCUS」「日経ビジネスオンライン」「ITmediaエグゼクティブ」「BOSS online」、フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「キカナイトF」、その他業界誌等多数。
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連載相談実績2万名超の経営人材コンサルタント直伝!“エグゼクティブ転職”成功マニュアル