米国が円安を容認…2024年も「数量景気」加速か
第2に外部環境、日本を巡る地政学環境の大変化がある。
米中対立が深刻化し、かつて日本たたきに狂奔した米国が、対中デカップリングのために強い日本を必要とし、そのための円安を容認するようになったのである。
大幅な円安の定着により、日本経済の大きな枠組みが変わった。円高が原因となったデフレの時代が終わり、2023年の日本経済はバブル崩壊後もっとも明るい数量景気の年となっているが、2024年はそれが加速するだろう。
Jカーブ効果により円安初期の価格面でのマイナス場面が終わり、数量増の乗数効果が表れる後半の時期に入っている。
円高で日本から海外に逃げて行った工場や資本、ビジネスチャンス、雇用が、円安によって日本に戻ってきつつある。円安はまた、インバウンドを増加させ、外国人観光客が日本の津々浦々の地方内需を刺激している。
“強い日本”を象徴する「トヨタの6割増益」
この日本企業の急回復の象徴がトヨタの利益急増である。トヨタは2024年3月期の連結純利益予想を3兆9,500億円(前期比61%増)、従来予想比5割増となる上方修正を発表した。
これは過去最高益を4割も上回るものであり、為替前提などからみてさらなる上方修正の余地を残している。半導体不足解消による生産増、車の機能向上に伴う値上げが貢献した。
米国での23年7〜9月の平均販売価格は4万674ドル(約610万円)と、4年間で19%上昇した(Wards Automotive News)。過当競争で採算悪化が進行している中国とは逆に、消費者の購買力が旺盛な米国での販売基盤の強さ、及びブランドロイヤリティの高さがものをいっている。
大幅な円安がそれに拍車をかけた。半期ベースの売上高純利益率は、トヨタ11.8%と、多額の補助金の恩恵を受けるテスラの9.4%を上回った。時価総額2倍以上の市場の寵児テスラを上回るトヨタの収益力は、日本企業の稼ぐ力の向上をうかがわせる。
EV投資にともなう負担は今後本格化する。トヨタは30年までにEVだけで5兆円を投資するとしている。本格化するEV投資競争においては、持続的なキャッシュ創出力が勝利の決め手となる。日本の時代到来を示唆する出来事といえる。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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